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⻘いカフタンの仕立て屋のsacoのレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
3.8
冒頭の体に絡みつく様なペトロールブルーのサテン生地の上を撫でる様に動く指、繊細に刺されていく針と金糸が紡ぎ出す美しさに目を奪われました。

仕立て屋夫婦とその弟子の青年....の物語。
自分の死を悟り、夫の有りのままを静かに受け入れる妻。
妻を愛しながらも、抑えきれない本当の自分の気持ちに苦悶する夫。
そして、彼を愛する青年。
口には出さない3人の熱く複雑な思いが絡み合う視線の妙。

穏やかに映し出される画面の底から聴こえてくるコントラバスの奏でる音が、腹の底に不穏な響きをもたらしてます。
後半、多くの葛藤の先で、それぞれが有体に相手を思い愛する姿に心打たれた。

常にコーランが聞こえるイスラム教戒律がある中でも、世界共通の“愛の形”はあると改めて思いました。

妻が亡くなった朝、すぐ傍から聞こえる風鈴の音と遠くのカモメの鳴き声が、静かに胸に沁みる。
青いカフタンを纏った妻の遺体を夫と青年が担いでいくシーンは印象的でした。

宗教戒律の厳しいモロッコでこの様な映画が撮られたという事は驚きでした。
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