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キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのsacoのレビュー・感想・評価

4.0
2011年、医療用通報装置のちょっとした誤操作から事がだんだんと大ごとになっていく様子を時系列のままに見せていくので、臨場感に加えて増していく緊迫感に胸が押しつぶされそうになります。
地獄の底から迫り上がってくる様な効果音が恐怖を煽って90分間息つく暇も与えない。

最初の3人の警官も悪だが、その後に到着した顔見知りであろう警官たちが最悪。
止められない邪悪で冷静さを欠いた凶暴な感情が、小さな正論を蹴散らして膨れ上がっていくところが怖い。
殺されたケネスに思いを馳せると歯軋りするほど悔しい。
優しい息子や娘や姪の悔しさも計り知れないと思う。
この事件はたまたま露呈したけれど、こんな理不尽な事がすごくいっぱい起こってるのだろう。

最近見た『福田村事件』で起こった事もそうだけど、正しい事を言って止めようとしても狂気と化した群衆の前では、それがいかに無力であるかという事を思い知らされました。
そこに“差別”以前の人間の群衆心理の恐ろしさもあると思います。
全身に力を入れて鑑賞した90分だったので、見終わってぐったり疲れた。
主役のフェイソンの迫真の演技は素晴らしかったです。
当該警官のお咎めなしには納得いかないし憤りを感じる。
事実だけを突きつけられて、怒りにも増して虚しさだけが残りました。
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