事前におぼろげに内容を聞いた時、“怪物”というタイトルは、ちょっと奇をてらってるのかなという違和感があった。
でも、鑑賞後、その違和感こそが物語の肝なのだと納得できる。
その言葉は、形あるものを指すのではなく、誰しもが持つ内面的なコントロールの効かない感情の事を捉えて言っているのかもしれない。
視点を変えて見る事で、それぞれに湧き上がる感情、状況のギャップに驚く。
人を理解する事の難しさと、思い込みで行動する危うさ。
分かっていても、改めて突きつけられた気がした。
そういうことが根底にあって、語られるエピソードがとても意味深くて惹きつけられる。
田中裕子扮する校長の事故入れ替わりの噂は、優秀な日本の警察がそんな事をすんなり信じるのか、ちょっとリアリティが薄い気もした。
3幕に分かれて時系列を追いながら見せられるが、所々に疑問があって、永山瑛太扮するホリ先生が屋上から飛び降りそうなシーン、なぜ踏みとどまったのかが今ひとつはっきりしない。
トロンボーンの音と関係がある？
あのシーンの後に作文で謎を解いて嵐の中を駆け出したと思ったけど、、、私の勘違いかな。
ラストシーンで2人の子供の生死で感想が分かれている様だけど、私ももしかしたらあちらの世界に逝ったのかなと思った。
でも、是枝監督と坂元裕二はそんな結末は描かないと言う意見を聞いて、なるほどそうかもと。。。
今まで、是枝監督が撮ってきた作品を思い返しても“子供に希望のない死”は考えられないかもしれない。
「誰もが持てるのが幸せ」との言葉は、とても印象に残った。
『真実』『ベイビー・ブローカー』でちょっと失望していた気持ちが、坂元裕二脚本で再び興味が湧きました。
LGBTについては、ふたりはまだ感情を理解するには幼いし、今回の作品ではクローズアップするほど重要な要素ではない気がしました。
子役のふたりの演技が凄く上手。特にあのちっちゃい子、気持ちの変化を繊細な表情で見せてすごいと思う！
鑑賞後に色んな思いが蘇って、ひとつの答えで割り切れない人間感情を考えさせられ、そういう意味でとても面白かった。
