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PERFECT DAYSのsacoのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.4
コレは大好物の作品でした。
なんだかジャームッシュの和製パターソンのような雰囲気。

どんな過去があって今の生活になってるのかは分からないけれど、あの年齢に達して本当に必要な物と好きな物以外は全て削ぎ落とし自分の居心地の良い空間で毎日を過ごす幸せ、羨ましいです。

同じ様に朝が来て夜がくる、なのにそれは決して同じではなく“今度は今度、今は今”、それがいい。
ほんの些細な出来事にこの上ない幸福感が込み上げる。平山(役所広司)にしか分からない瞬間にだけある奇跡、あんなふうに過ごせたらいいなぁと思いました。
実際は、人はひとりで生まれてきたわけではなく望まぬしがらみを全く無しにはできないだろうけど。。。

カセットテープ、木漏れ日の写真、古本屋、いつも立ち寄る居酒屋、銭湯etc 、何もかもが心地よい。トイレの中のメモも楽しい、少年がふりむきざまに振った手と笑顔も良かった。
“影は重なると濃くなると思ってましたが同じですね”“いや同じではないですよ、そうじゃないとおかしい”、友山(三浦友和)に答える平山の言葉は自分に言い聞かせている感じがしました。
身近な人たちとの繋がりは、平山の毎日をそれなりに濃く豊かにしているのだと思います。
長い人生、過去には納得のできない辛い事も沢山あったはず。
妹との関係もそうだけど、全てをあからさまに描かないところも良いなぁと思いました。
ラストシーンで大写しになった平山の表情には、幾重にも重なる様々な感情が表れて俳優役所広司の真骨頂でした。

ヴィム・ヴェンダース監督の作品は「ベルリン 天使の詩」「パリ、テキサス」は知っているけど、どちらも退屈で私はあまり好きではない。
けど、今回の木漏れ日の中の“静”の物語はとても好きでした。
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