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波紋のsacoのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
3.7
荻上直子監督は、人間のちょっとした感情の機微をとても上手く表現して好きです。
『波紋』は女性の細かい心理的な部分を丁寧にリアルに描いて面白かった。
女性は一度嫌いになったら、もうとことん嫌う。そんな心理的様子を依子(筒井真理子)の日常の随所に表して、時に笑わせる。
歳を重ねた女性なら少なからず共感できるところがあると思った。
度々挿入される“ターン”と響く音は、最初、雨の雫が水面に落ちる音を強調してるのかなと思って見ていた、タイトルが波紋なので。一滴の雫が徐々に広がって大きな幾重もの波紋になる。
依子の周りで起きる様々な状況を投影して見せている感じ。
それが枯山水の雨の中、フラメンコの手拍子に繋がるラストシーンもシュールで面白かった。

それぞれの感情がぶつかり合うシーンをほぼ白黒の枯山水の上に配してセリフを掛け合わせる見せ方は、舞台を見ている様だった。
出てくる女性が皆逞しいのも良い。障害を持つ彼女も実はとても強かでびっくりする。

舞台で鍛えた実力派の役者が結集して、映画や舞台ファンの琴線をくすぐる作品で、面白く観ました。
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