竜平

Dr.パルナサスの鏡の竜平のレビュー・感想・評価

Dr.パルナサスの鏡(2009年製作の映画)
3.8
何やらいかがわしい興行をしながら旅する「パルナサス博士」率いる大道芸人たち。彼らの出し物である、入り込んだ者を奇妙な世界へといざなう「鏡」を巡る騒動を描く。テリー・ギリアムによる摩訶不思議ファンタジー映画。

ヒース・レジャーの遺作でもある今作。撮影の途中で急逝し、作品の完成が危ぶまれたところで残りの撮影部分をヒースと親交のあったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人に代役を務めてもらうことで完成まで漕ぎ着けた、というのはわりと有名な話。まぁそれは一旦置いとくとして。奇妙な設定、独特な世界観、クセのある登場人物など、まさにギリアム節と言える内容。なんだけども、人の想像力やら願望やらを具現化?するこの「鏡の中の世界」がなんなのかそこまで詳細には語られないし、ストーリーはわりと突飛だし展開も速いしで、初見では正直あまりピンと来なかった記憶。なんだけど今回久しぶりに、難しく考えずファンタジー映画ということに重きを置いて鑑賞したら非常に楽しめたというところ。

大昔に何やら賭けをしたという二人の存在、「悪魔」と「物語を読む者」とか、不死の力を得て1000年生きてるとか、何か基となった物語が他にありそうな感じ。まぁそこらへん察せなくともとにかく見ていて楽しいのが奇抜すぎる「想像」や「欲望」を映し出す鏡の中の世界。これは例えば『エターナル・サンシャイン』や『インセプション』みたいな、現実ではあり得ないような表現が満載で、また時折シュールな出来事もありつつの予期せぬアイデアの連続で、視覚的に本当におもしろい。ストーリーの意味合いってのもまぁ、行き着く結末の部分含めいろいろ考えつつ見るべきなんだろうけど結局のところそんなに説明されないし、適度に考えてあとは「感じる」べき、なんじゃないかな。きっと本来の主人公はタイトルにもなってる「パルナサス博士」で、彼の悲哀というのも楽しめるところではある。ちなみに演じてるのはクリストファー・プラマー。あとじつは出てる若きアンドリュー・ガーフィールドよ。

今でこそ考察やら「答え」的なものがネットに転がってるのかも。それを見れば題材や教訓めいたものまで判明するかもしれないんだけど、とりあえずは調べないでおく。今作は深く理解せずとも楽しめる部類の映画だと思う。てか、鏡の中の世界で顔が変わっちゃうってのは後付けの設定なんだろうなーとか、現実世界のシーンを先に撮影してたんだなーとか、メタ的な視点でも楽しめる気がする。なんというか設定やらを変えてまでも作品を完成させたその執念というか心意気というか、ヒース・レジャーへのあれこれを感じれるのも今作の見どころと言えるんじゃないかな。てなわけで、なかなか異色な一本。嫌いじゃない。またそのうち見たくなると思う。
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