みかんぼうや

お熱いのがお好きのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

お熱いのがお好き(1959年製作の映画)
3.8
【ティス・イズ・アメリカン・エンターテインメント!何も考えず、ただただワクワクしながら気持ちのいい一時を過ごすのには最高のコテコテのドタバタコメディ】

いや~、楽しかった!“面白かった!”よりも“楽しかった!”という言葉がとってもしっくりくる作品。連休の快晴のお昼に観るにはなんともピッタリな明るく終始ワクワクした気持ちで観られる映画。これぞキング・オブ・アメリカン・エンターテインメントと言わんばかりのドタバタでコテコテで、かなり“お決まり”の分かりやすい話の展開だけど、練られた脚本で最後まで飽きさせない。そこに歌ありダンスありの痛快コメディ!このお約束感の強い展開は、日本で言うところの吉本新喜劇的な感じなのかな(新喜劇をちゃんと見たことないので的外れだったらごめんなさい)。とにかく“安定の楽しさ”に溢れた映画でした。

監督は「情婦」「アパートの鍵貸します」の大巨匠ビリー・ワイルダー。どちらも好きな作品だったので(特に「情婦」はアメリカ古典映画の中でも数本の指に入るくらい好きな作品)、名高い本作もはずさないだろう、とは分かっていましたが、こういう“単純に心躍るエンターテインメント”もまた映画の素晴らしい魅力だな~、と普段コメディを積極的に観ない自分は改めて感じたのでした。

話はとある事件をきっかけにマフィアに追われることになったサックス奏者とベース奏者の二人が、女装して女性専門楽団に潜り込む中で起きるアレコレ・・・というものですが、後に当たり前となるような男性の女装設定は当時は珍しかったのでしょうか?監督ビリー・ワイルダーはカラー作品にすると女装が目立ち非難が増すためモノクロにした、という逸話があるとか。

ちなみに、マリリン・モンローの出演する作品、実は本作が初めてだったのですが、当時世の中の全ての男を魅了したと言われるほどの魅力を実感しました。正直、有名な白いドレスを着て風でスカートがめくれる写真くらいしか知らず、喋ってるシーンすら見たことがなかったので、魅力的な女優と感じたことはそれまで一度も無かったのですが、こんなにお色気ムンムンなのに小悪魔的な可愛さを持ち合わせている女優がなかなか頭に浮かんでこないほど唯一無二の魅力を持った女優だと思いました。今見でもそう思うのですから当時の男性の熱狂っぷりは相当だったのでしょう。

しかし、本作の撮影時も相当わがままだったようで、撮影のトラブルの99%はモンロー絡みのトラブルで、監督も二度と仕事をしたくないと話していたそうですから(Wikipedia)、後の死に繋がる精神的な不安定さは、この頃から強かったのかもしれませんね。

マリリン・モンローに触れる内容が多くなってしまいましたが、彼女はそれほどの存在感を放っており、モンロー作品未視聴の方には、その魅力が余すところなく伝わる作品の一つではないかと思います。脚本は「アパートの鍵貸します」でビリー・ワイルダーとタッグを組んだI・A・L・ダイアモンドとのコンビなので、同作の“ちょっとした時間差とズレの入れ替わり劇”的要素も楽しく、重い映画で疲れた頭と身体にはもってこいの作品かもしれません。
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