みかんぼうや

ライフ・イットセルフ 未来に続く物語のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

3.7
人生における出会いと別れ、喜びと悲しみを、アメリカとスペインに住む2つのカップル、そして、その子どもを通して描いていくヒューマンドラマ。

全く異なる異国のカップルの人生、そして親から子にわたり紡がれる人生の見せ方が魅力的で、その異なる人生が少しずつ接点を持つ瞬間など、脚本が上手いです。観始めはただのカップルの恋愛物だと思っていたのですが、それが徐々に人生という大きなテーマに広がっていく展開に自然と入り込むことができました。

また、それぞれのカップルの日常生活を映し出す映像も日常生活の画ですが美しくて、人生を語る作品ながら重すぎずサクサク進むテンポの良さも含め、演出的にも観やすく好みでした。

ただ、ラストにはかなり心揺さぶられ感動の波が押し寄せるだろう、と勝手に期待していたものの、結果として何か強烈に刺さるものがなく、感動で心満たされる、というところまでいかなかったのは、全体的に“言葉で語られる部分が多すぎた”からかもしれません。

物語の核心をつく部分や最も伝えたいメッセージが、全編で多用されるナレーションや登場人物たちのセリフによって全て語られてしまっていて(ラストのスピーチなどは、作品の総まとめとして、製作者の伝えたいことをご丁寧に整理して話してくれます)、画面には映らない物語や登場人物たちの思考や感情を、余白や行間の中から勝手に妄想し膨らませて色々自分の頭の中で消化して勝手に感動したい自分にとっては、その余地が無いくらい説明的に言語化されていたのはちょっとマイナスでした。もうちょっと言葉数少なく、受け取り手が自由に考えられる余白があったほうが、ヒューマンドラマとしては感動できたと思います。

あと、かなり後半に時系列的におかしなところを1つ見つけてしまい、それが若干引っ掛かってしまいました(ラストシーンの設定が2050年くらいだったら納得なのですがとてもそうは見えなかったので)

ですが、作品全体は観やすく面白く、言葉数が多すぎる点以外は、好きな内容でしたので、ぜひダン・フォーゲルマン監督の他作品も観てみたいと思いました。
みかんぼうや

みかんぼうや