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アラヴィンダとヴィーラのくりふのレビュー・感想・評価

アラヴィンダとヴィーラ(2018年製作の映画)
4.0
【謝れる男】

JAIHOにて。2018年のテルグ映画だが、古さは感じない。まず、抗争映画にフェミニズムをこう、取り込んでいるのはむしろ新しいんじゃないか、と思いながら見ていた、ら。

終わってみると、幾つかのテーマを交錯させた、挑戦的な映画だったのだと感心した。その成功率は別にしても、見応えありましたよ。

男が殺し合い、女がやめて〜と泣くのはいつもの初期構図だけど、

“タフだけど、人の話を聞く”

主人公ヴィーラはヒロイン、アラヴィンダからまず、学ぼうとするんですね。敵対する村同士の殺し合いで幕を開けまたかーと思ったが、そこが本筋ではなかった。タイトルを主人公の名とするのはインド映画の定番ですが、ヒロインの名から並べることにすごく意味がある。

私はラージャマウリ監督の『あなたがいてこそ』でこんな、村戦争って設定に出会ったが…空想と思ったら実際に、あるんだ!もちろん、映画ではデフォルメされているでしょうが。

舞台となるプラデーシュ州のラーヤラシーマ地方では、ファクショニスト(派閥主義者)と呼ばれる人々が、対立する派閥同士で実際に抗争し、多数の死者も出て、そこからエンタメ化するファクション映画というジャンルも出て…ということなのですね。ベンキョになった。

で、善の集団が悪の集団を懲らしめる、というのが映画の定型だったが、本作はその型破りをしたことが斬新だったらしい。本国ではヒットもしている。

暴力が風土である地で、暴力のDNAを継いでしまった男が、その連鎖を食い止められるのか?“有害な男らしさ”とは、沈静化できるのか?

女から学ぶこと。そして、悪事は素直に認め、謝ること。

暴力がメシの種だったファクション映画で、これをやるのは諸刃の剣だし、どうしたってアンビバレンツな箇所は出てしまう。事件の締め方は無理めだし、フェミニズムということでは、それでアタマとおしりを都合よく、サンドイッチして終わらせたような後味が残る。

円満な解決からみれば、達成度50%というカンジでしょうか?それでも、私はこの挑戦に同意します。特に、前のサイトで“謝れない男”の醜さを、イヤってほど見てきたので。www

例えば有名どころで『ゴッドファーザー』などと比べてみると、本作の新しさがよく解る。

NTR Jr.はいい仕事しとる!彼がこういう役を演じることに、インド本国では大いなる意味があるらしく。ぷっくらサウス体型テルグの藤岡弘、相変わらずダンスは、キレキレ!

ヒロインのプージャー・ヘーグデーは、見ているうち段々とよくなりました。役柄で得している気がします。ダンスではあまり感心できないものの、眺め甲斐のある美人ですね。

ラスボスを演じるジャガパティ・バーブが、尋常でない狂気と、逆に哀れを体現したことが素晴らしく、イコール本作のテーマ体現と成っていました。やっぱり悪役は、どんな物語でも主役と対の強さで描かないと、ダメですね!

改めて、インド映画は表向き野蛮に見えても、良作ならちゃんと前に進んでいると実感。

<2023.6.26記>
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