氷雨水葵

ソフト/クワイエットの氷雨水葵のレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
3.4
2023年54本目

ちょっと期待しすぎた

◆あらすじ
幼稚園で教師をしているエミリーは「アーリア人団結をめざす娘たち」という、白人至上主義者グループを結成する。

教会で行われた1回目の会合に集まったのは、エミリーを含む6人の女性。

しかし、二次会のために立ち寄った食料品店でアジア人姉妹との口論が勃発。腹の虫がおさまらないエミリーたちがとった行動とは―――。

◆感想
ポスターと予告編で気になっていた本作を鑑賞してきました。正直なところ、ブラムハウス製作だと楽しみにしていたのですが、ふたを開けてみれば「なんだこれ」という感想しか出てこない。『ザ・ハント』や『パージ』といったアメリカ社会にメスを入れるような、風刺的な作品はいくつもあるものの、これはさすがに笑えない。しかも、ワンショット撮影する必要があったのかという疑問まである。まぁ、そのおかげでリアリティはあったし、自分がその場にいるような緊迫感を味わうことはできたけど。とはいえ、本作を観て「白人至上主義万歳!」と思った人はいないんじゃないかな。
ホラー的な怖さや気持ち悪さじゃなくて、ブラムハウスお得意の’’本当に怖いのは人間’’というのを突きつけてくる内容なのはよかった。ただ「イタズラしようぜ」から始まった取り返しのつかない状況、そのあとの白人同士による無駄な言い争い、やること言うことすべてが幼稚でとてもじゃないけど見ていられないし、ただただ不快。ただでさえ女性だけの集まりなんてロクなことないのに、それが白人至上主義者だけの集まりだっていうんだから恐ろしいよね。一見、みんな周りに不満を抱え「白人こそが正義」みたいな共通の思想に見えるけど、腹のなかでは全然そんなことなくて、むしろ表面上だけ団結しとけばいいや精神に見えました。そして、その中でも本気度が高いのは誰かみたいな、結局主人公のエミリーは尻込みしたまま、レスリーに言われるがまま行動していたわけだけど、こういう場面で本当に怖いのは「なんとなく会合に参加してみた人」なんだよね。

批判はあれど、脚本は面白いと感じてしまう。そもそもは「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義グループが会合を開いたってだけなのに、アジア系2人が閉店中に入ってきてから一気に不穏な感じになる。仕舞にはエミリーの夫(出番少なめだけど)まで巻き込み、挙句の果てには「パスポート盗むぞ!」という子どもみたいな考えに至る。さらに、そこに誤算が生じて’’あんなこと’’になってしまうし、ワンショットで描くことでただの白人至上主義者から一種の’’テロ集団’’になってしまう様がよくわかる。4人それぞれがなにかしらの役割を持っていたわけだけど、そのすべてが胸糞すぎてだいぶ辛かった。とくに罵詈雑言の嵐にもとれるレスリーにはイライラが止まらない。まぁ夫をなんとかして説得するエミリーにも嫌気がさしたし、「はよ、離婚せい」と言いたくなるくらいには夫にもムカついたけど。みんながみんな同時にエスカレートしたら、もう誰にも止められないし、もしかしたら実際にどこかでこういう事が起こるのではないかと思わせる脚本でした。

ブラムハウス作品とはいえ、もう一回観たいとは思わないかも・・・。

アップリンクにて鑑賞
氷雨水葵

氷雨水葵