真田ピロシキ

ソフト/クワイエットの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
3.0
公式サイトで監督が「決してKKKが改心するような観客を甘やかすインディペンデント映画にはしない」というようなことをとても熱量のこもった長文で綴っていて興味の高かった映画。そうだ、レイシストに半端な情けなどかけてやる必要はない。奴らはクズだ!

そう期待してたのだが、始まると雲行きが怪しい。主人公の白人至上主義かつアンフェの女たちがレイシスト会議を開くのだけれど、その内容があまりにありきたりな量産型レイシストのそれで目新しいものはなく、そいつら自体も当然平凡な人間なので、感覚としてはTwitterでネトウヨアンフェ表自暇アノンを見ているかのよう。私はわざわざあんな連中を主体的に眺める趣味はないので退屈で退屈で本当に寝落ち寸前。しかも1カットなので不要なところまで余すことなく見せられダルさが倍増。

メイン展開である中国人姉妹を皆で脅しつける辺りでやっと目は覚めるが、そうなって凶行に及んでも自分達はスゴいと思ってるクソバカがギャーギャー喚きながらバカ三昧を繰り返すのをずっと見せられてて、胸糞悪いという感情に達する以前にバカどもに呆れてばかりでやはり退屈。宇宙一嫌いな映画『ファニーゲーム』の邪悪さって本当に考えられてるんだなあと思うのだった。このバカ女どもはレイシストの記号をつけられた書き割りでしかなくて、感情に訴える力がない。背景を描いたらいけないという考えは分かるが、それにしてもここまで薄っぺらいとどうにもならない。主人公は不妊に悩んでいる描写があるが、所詮フレーバーテキストみたいなもの。結末も予想の枠内。語ろうとしていることには賛同したいがよくできた映画とは残念ながら思えず。

でも、犬が死なないのは犬猫が死ぬのは許さないが人間が死ぬのは勝手にやれみたいなつまらないノリへの皮肉なのかな?人は殺すのに犬は殺さないんだもんなあ。だとしたら面白い。