ルイまる子

水は海に向かって流れるのルイまる子のレビュー・感想・評価

水は海に向かって流れる(2023年製作の映画)
4.3
意外にすごい刺さった!この作品が言わんとしている「仁義なき時代」に「もの申す」所が大好き!テーマは人間として「筋を通す」重要さだ。ヤクザの世界じゃないけど、人間には生きていく上で、仁と義という、人に対し愛情を持つことと、正しい筋道がある。それがなければ目に見えないが心の傷は受けたまま一生時間は止まったままである。

今の時代、大人は無責任に好き勝手やって、深く傷つけた子供に対し全く仁義を通さない。知らん顔して、時が経てば忘れるから良いとさえ思っている。癒えない傷を持ったまま放り出される子供に対し何の責任も取らない。起こった事の理由や説明、そして心からの謝罪もない(というか謝罪も口だけである。最後の直達くんのやり方本当に心からスッキリした)。いや、子供だけの話ではなく、世の中全般に、強者が弱者を平気で傷つけ、そのまま放置し、早く忘れろ、そして、それ以外の人がその弱者と関わるのは、一番の禁忌ならしい。悪を放置し、善は(力のない者は)無視され抹殺される。

【この後若干ネタバレ】
何もなかったことにして生きて行きたいと言う榊さんは、明らかにその傷のせいで前進出来ていない。しかし、いつまでも傷を抱えた子供に対し、「え?あんたまだそんな事引きずってるの?おかしいよ」「皆それぞれが自分の人生なんだから幸せに生きないとね!」等と平気な顔で(捨てた母親が!!)のたまう。自分がその深い傷を作った張本人なのに…。加害者はちゃんと心から反省したり、被害者が受けた生涯乗り越えられないその傷についてよくよく考えることだ。

直達くんが「ぼくは榊さんよりも長く生きてるから榊さんの傷について忘れないよ」だったか「思い出すよ」だったか。この言葉ものすごく刺さった。

親が一番知らん顔してる中で、ちゃんと責任を持ち、関わった人の心の傷について深く考えるてくれる高校生の直達くん、自分が榊さんになったみたいに嬉しかった。
ルイまる子

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