昨日の日本アカデミー賞主演女優賞、杉咲花が獲るべきだった。杉咲花の本作の市子は唯一無二だ！この映画は杉咲が演った事で百倍味わい深くなっている。
市子という女性は、プロポーズされた翌日失踪するが、彼女の過去が少しづつ明らかになっていく。この構成がとても良くて、段々と確信に触れていく展開が面白くて、時間を忘れたようにスクリーンに釘付けとなった。
小学校も学年を下げ名前を変えて入り直したり、この世には居ない存在として扱われた生い立ち。妹の介護、貧困、親からのDV、苦労を重ねてきたからこそ、彼女の厚みを作り上げた。その御しがたい哀感が全身から溢れるが、同時に徹底的に他人を拒絶する冷たさもあり、男が次々と彼女に堕ちていく。男だけでなく彼女を救おうとする女の子も彼女の人生に出てくるのも当然だ。世の中捨てたものじゃない。一方、市子は彼らへの感謝はあるが、ただ自分が生き延びる、それだけだ。でもそれも非常に納得出来る生き方だ。先程も言ったように、他人には絶対に理解出来ないだろう、だからこその冷たさだ。よく理解出来る。
【ネタバレあり】
最後の最後まで妹とのシーンがなく、やっと種明かしとして命を断つシーンが出てくる。寝たきりの妹が姉を見つめる目が印象的だった。幸せだった頃の家族との一枚の写真も印象的だった。市子に盲目的恋をした犠牲者？北くんについては、当然のことながら、自ら彼女のために身を捧げ死んだんだろう。自殺志願者の女性の描写がほぼない、これらの描写が僅かな点が本作の良さだ。妹にしても、彼らについての描写は短い方が良い。必要ないからではなく簡潔に描く方が良い。
一番憤りを感じたのは、市子ちゃんのケーキ屋さんの夢を台無しにした事だ。探さないであげてね〜と思わずスクリーンに叫んだ。
