MasterYu

怪物のMasterYuのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.8
夫に先立たれた麦野早織は、息子の湊の様子が気になり話を聞くと、担任の保利にモラハラを受けているという。
早速早織は学校に出向きその旨訴えるが、保利含め学校の対応は彼女が望むものではなかった。
更に保利は、湊が同級生の星川を虐めていると訴え・・・。

湊の母親・麦野早織の視点、担任の保利の視点、そして最後に湊の視点と、それぞれの視点が順番に展開される構成の仕方は、2021年10月に劇場鑑賞した「最後の決闘裁判」、或いは「羅生門」と同系。
視点によって見え方が変わるという流れからすると、最後の視点で真相が分かるというのは読めるし、しかも公開前のカンヌでクィア・パルム賞受賞とか、壮絶なネタバレかましてくれちゃったお陰で、おおよその「原因」も予測できたりする。
しかし尚、作品としてのクオリティは高く、見ているものと見ていないもの、または見えていないもの、多面的に物事を見ることができない中から生まれくる「怪物」の存在に心掻き乱されます。

昭和臭漂う子供の表現は如何なものか?と思ったりもしましたが、子役の2人は間違いなく作品の根幹をしっかりと支える存在感を示していたし、アンバランスなセクシャリティが、「見たいものだけを見る」世間の観念によって、ある一定方向からすれば「怪物」のように見える描写は巧い。
ラストシーンの解釈は分かれそうですが、あれを心休まるものと捉えるのか?それとも「死」という悲劇(子にとっては「解放」?)と捉えるのか?それによって鑑賞後の余韻も違ってきますね。
MasterYu

MasterYu