たく

怪物のたくのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

もう一度鑑賞してからレビュー書こうかと思ったが、やはり書こう。それを言ったらほとんどの映画に対してもう一回観たほうが良いんじゃない?になってしまうので。

3日経ったが、非常に言葉に表すのが難しかった。ただ単に、この少年二人を取り巻くストーリーとして満足できれば良いけど、そのようなシンプルな映画ではなさそうだし、大人の立場からものを見ると、また違う。
この中の誰かの登場人物に感情移入できるかと言うとそうでもないし、何か正直初見の感想としてはモヤモヤした感じだった。

自分の言葉が定まらぬまま、Filmarksのレビューを見て、『せいぜい3.5〜3.6くらいかな』と思ったら、何と自分が見た時点で4.1が付いていて驚いた。自分の中で何か煮えきらぬものがあったので、軒並み4以上のレビューを見るとは思わなかった。

そして、改めて自分なりに単純に考えて、この映画をどう受け止めたか考えた。
教師からイジメを受けたとされる生徒の母、そして当該教師、そして当該児童とその友人である少年。この3視点とさらには校長先生の視点が加わった映画構成は、この内容にはぴったりだった。これは凄く我々の日常にある事で、これが教育の現場となると異常なほどに生々しかった。これが今、日本で起きていることなんだとも痛感した。
演出や、役者さんたちの怖いまでのリアルな演技も凄く、より緊迫感を感じた。

では何が自分の中で腑に落ちなかったのか、いや腑に落ちないと言うか、心が持っていかれなかったのか、と考えたのだが、それは少年二人が少々綺麗に描かれ過ぎなのでは、と感じてしまった。
正直、星川くんと言う子、いじめられてるのに、もう虐待の経験もあって耐性が付いてて、何も感じないあの姿は、自分には怖く感じてしまい、可哀想ともあまり思えなくなった。これはある意味、彼が作中で『怪物』になりきってしまっていたのかもしれない。
そして、湊くんも普通に噓付いてるじゃないか!と言うのが引っかかってしまい、最後あんな綺麗な描き方して良いのか、と思ってしまった。
自分自身、これくらいの年代の子供に対してあまり愛情がないからかもしれないが、是枝監督作品で言えば、『万引き家族』のあの子達の方がまだ愛おしく思えた。

あとは深読みにはなるが、星川くんの名前が『ヨリ』だったが、何か女の子っぽい名前だなあ、と思ってた。意図的かどうかは分からないが、もしかしたら彼は家庭環境的なものも含め、あのようになったのかな、とも思った。

また、坂本龍一さんの音楽がとても良かった。
過度な演出のないシンプルにピアノ一本。繊細な旋律が非常に心に沁みた。

是枝監督、今回は脚本は書いてないが、毎回色んな社会や世界を見せてくれるから本当毎回考えさせられる。感謝感謝。
たく

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