あおや

怪物のあおやのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.7
誰が“怪物”なのか?

安藤サクラ演じる母親からみえる人間模様から、視点が移り変わるとともに全く見え方が変わる多面性。前半部ミステリーとして楽しめる物語は、想像の斜め上をいく方向に帰着していく。中盤はやや冗長に感じられたところ(湊と依里の関係性が明らかになるシーン)はあったものの、全体としてはてんこ盛りで満足感のある邦画作品。
同調圧力やイジメにみられる集団心理、徐々に自覚が芽生えはじめるセクシャリティについて。多感な時期に誰もが経験しうる二つの事柄を、自らの経験とリンクさせて考えさせられる。
協調性がある反面人の顔色を伺う国民性が多分にある日本において、自らはどう振る舞うべきなのか。自身の考えを表明すること、自分を受け容れることはたとえ成人であっても簡単なことではない。本作の湊は紆余曲折ありながらも最後は自らを受け容れ、感情に正直に振る舞うことで心の靄が晴れていく。そこで流れてくる坂本龍一の沁み入る劇伴にて締める含みをもたせたラストがよかった。
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