またたび

怪物のまたたびのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.3
是枝監督が自分で脚本を書かずに坂元裕二氏に依頼した作品ということで興味を持ち、カンヌで脚本賞まで取ったということで鑑賞。
正直言って坂元裕二氏はトレンディドラマ脚本家のイメージでテレビ業界とベッタリで作品自体あまり好きではない。
その坂元裕二氏と是枝監督がタッグを組んだことに驚きだった。

カンヌではこの作品はクィアパルム賞も受賞しているが、これによりSBGTQの作品だとして、その世界の人々から批判を受けているような話を見た。
果たして、この作品はSBGTQを描いているのか?違うと思う。この作品は、この世の中で生きづらい人々を描いているのであり、SBGTQもその一部として描かれているに過ぎない。
この作品は同じ場面を視点を変えて描かれ、それにより実際に何があったのかが明らかになるような構成で作られているが、
この作品には様々な生きづらい人が出てくる。子供の湊と依里はもちろん、安藤サクラ演じる湊の母親も、暴力の疑いをかけられる瑛太演じる保利も、謝罪に終始する田中裕子演じる校長も世間という窮屈な好奇の目から身を守るために本音とは違う行動を取る。
少し変わった人を世間(常識)は、裏で虐めることで排除しようとするが、それでも人は、自分の世界を世間から守り、子供は未来に向かって輝くのだ。
結局、怪物とは世間という常識のような気がした。
やはり脚本が素晴らしかった。坂元裕二氏には今後、いい監督と組んでドラマより映画脚本を多く書いて欲しい。
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