Yuri

怪物のYuriのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

伝えないことで守れるもの、傷つけるもの、守ろうとしたが故に取ってしまった間違った選択、人々が無意識に行ってしまう加害的な言動、それぞれの思惑から生まれた混沌の悪意はルーレットのように一人をめがけて直撃する。ほんの少しの差があったら、違う人物に直撃していた可能性が高い。子どもたち、特に湊(黒川想矢)が自身の混乱と未熟さゆえに一人の人間の人生を壊したことは「幼い、純粋」では済まされない。間違った選択をし、コミュニケーションで解決することを諦めた人たちの罪も重い。誰も死ななくて良かったけれど、誰かが死なないと気付かないんだろうなと感じた。日本の「臭いものには蓋を」精神は子どもにまで根付き、同じく根付いている「嵐が過ぎるまで待つ」精神では、取り返しのつかない事態になることを歴史の中で何度繰り返されてきたはずなのに、その前例から抜け出すことを億劫だからしない。これまでの私たちの常識といわれる事々や法律、社会のルールで明らかに間違っていて、前例をぶっ壊すべきものはたくさんあるのだけど。子役の黒川想矢くんと柊木陽太くん、是枝さんって本当に同じタイプの子選び続けるのだなぁと思った。怪物は積み重なるディスコミュニケーションの末に生まれてしまった思い込みのナイフかな。誰も責められないけれど、全員が加害者で被害者という、言葉で説明しにくいけれど、誰もが体感したことのあるイヤミスでした。
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