rage30

怪物のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

イジメ事件を3者の視点から描いた作品。

母親・教師・息子と、1つの事件をそれぞれの視点から描いていく本作。
所謂、羅生門スタイルの構造になっており、視点を変える事で、新たな真実が分かったり、登場人物の印象が変わっていくのは面白かったと思います。

ただ、その一方で、モヤっとする部分もありまして…。

例えば、教師が母親に謝罪する場面。
後に教師にとって不本意だった事が分かるわけですけど、それにしたって、謝罪の仕方が不貞腐れ過ぎだと思うんですよね。
途中で飴を舐め出したり、ロボットの様な校長の対応にしても、ちょっとミスリードを意識し過ぎて、不自然に感じるものがありました。

ちなみに、この教師。
その後の不確実なイジメ情報をリークするのも良くないし、結果的にそれが原因となって自滅に向かっていくと。
被害者と加害者の逆転を見せたい作品なのだと思いますが、彼に関しては、自業自得な部分もあったのではないでしょうか。

最終的には、息子がゲイだった事が分かるものの、「この世界にゲイの居場所はないのだ!」と言わんばかりの結末は如何なものかと思うし、母親と教師の話が投げっ放しのまま終わるのも不満が残るところ。
やっぱり、最後はこの3者の何かしらの成長や変化を見たかったです。

怪物だと思った人が、実は被害者であったり、抑圧されていたり。
人を先入観で決め付けてしまう人間の心理こそが、怪物であるという事を本作は言いたかったのでしょう。
しかし、本作を見ていると、そんな人間の先入観よりも、学校の隠蔽体質だったり、子供達のイジメやLGBTQへの差別の方が明らかに問題だし、こっちの方が怪物じゃん!と思ってしまいました。

こういった社会的イシューを盛り込むのが是枝監督の作家性とはいえ、本作に関しては、それがノイズになってしまったのかなと。
言いたい事は分かるし、現代に訴えるべきメッセージだと思いますが、もうちょっと設定をシンプルにして、見易い作品にしても良かったかもしれません。
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