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すべての夜を思いだすのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)
3.8
五月の風に乗って多摩丘陵の周遊散歩したみたいな作品。たまたま、先日この辺りに出かけ、街の新陳代謝を感じたばかり。本作は多摩ニュータウンの女性三人の日常を追っただけなのに、最後まで飽きさせない、斬新な作風だった。丘を通り抜ける風に誘われ、雑木林の古い大木に新芽を見つけたような気分。

ある女性は知人の引っ越し先を探し丘陵をさ迷う。
ある女性は徘徊している老人を自宅に送り届ける。
ある女性は喪失を乗り越えようと新しいことを始める。

街を描く作品が好きで、街行く人をぼーと見ているのも好き。それぞれ自分のストーリーを生きているけれど、その瞬間だけ見ず知らずの人と時空間を共にする不思議な心地好さがある。

土鈴の音を初めて聞いた。かつてそこに誰かが暮らしていた証。太古から、人の営みは形は変われど、昔を懐かしんだり、明日をどう生きるか考えたり、人の温もりを求めたり、きっと変わっていないんだろう。そしてまた明日がやってくる。夕暮れの丘陵の鬱蒼とした森のざわめきを聞きながら、そんなことを考えさせられた。
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