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マイ・エレメントのkaitoのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
3.7
『マイ・エレメント』

過去に『アーロと少年』で監督を務めたピーター・ソーンの作品である。本作で描かれる世界では、「火・水・土・風」が住むエレメントシティを舞台に、エンバーとウェイドの恋愛模様が描かれるといった作品である。

ここ数年のピクサー作品の中では、非常にストレートでまっすぐな映画であった。似たような作品で「ズートピア」っぽいと言われている本作であるが、ストーリーの構造はあまり似つかわしくない。探偵ものの中に、人種差別などポリコレ的要素を散りばめられているのが『ズートピア』であるのに対し、『マイ・エレメント』は恋愛ドラマに重きを置いている。ピクサー映画でこれはなかなか珍しいのでは?他の作品を考えても思いつかない。

世界観は非常に好きだった。火だから起こりうること、水だから起こりうることが視覚的に分かりやすく表現されていて、子供でも非常にわかりやすいものになっており興味深いものになっていたと思う。ただ火だからこの性格になりがちだとか、木だからこの性格っぽい典型例に当てはめるような表現は個人的にはあまり好みではなかった。映画の中や宣伝でもそれっぽい説明がされていたような気がする。

映画の中で最も好きになれたのは、主人公エンバーとウェイドのやりとりである。プロットは「ロミオとジュリエット」っぽさを感じる。映画の中では水の表現が多用されている。列車が走ると線路脇にある水がしぶきをあげる。それは火が被る弊害を視覚的にわかりやすく表しているものだと思うが、エンバーの視点を通すことでその水も美しく見えるものになっている。エンバーの恋模様を視覚的にわかりやすく表現し、「好き」などの台詞を多用しないのは個人的にはかなり好きなポイントだった。ウェイドも好感の持てるキャラクターで二人の姿を追うのは、観ていて全く飽きることがなかった。

ただ若干脚本に突っ込みたくなることも多かった。エンバーの父の店が営業停止に追い込まれるピンチになった中で、「こうしたら営業停止をやめてあげる」もなかなかフィクションっぽすぎるなと感じたり。またエンバーの過去をもう少し描いていたら、癇癪を起こす理由にももう少し共感ができたと感じる。100分くらいでいい感じに纏まっているとは思ったが、もう少し映画を長くしても良いのだと感じた。

家族で観るには十分におすすめできる映画。観ていて温かい気持ちになれるし、近年のピクサー映画では好きな方だった。
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