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呪詛のkaitoのレビュー・感想・評価

呪詛(2022年製作の映画)
3.4
『呪詛』

Netflix制作で台湾ホラー映画の『呪詛』を観た。フィクションのものをドキュメンタリー風に撮る「モキュメンタリー映画」であり、個人的には好きなジャンルではないが、『ブレアウィッチプロジェクト』は結構好きな映画ではあるので、それがアジアンホラーに浸透できるのかという点でかなり興味深いなと前々から思っていた。「モキュメンタリー」は時には「ファウンドフッテージ」という場合もある。

時系列が非常に独特な映画だと感じた。「過去」と「現在」を交差的に映している映画であり、個人的にはその試みはかなり好きだった。というのも、「現在」に比べて「過去」の方が圧倒的にホラー表現という意味では優れていたように思う。もし交差的ではなく、「現在」→「過去」の構成であったならば、かなり映画を観ていて、そのクオリティの差に飽きてしまっていたかもしれない。過去パートは主人公のパートナーの村に行き、その村が崇拝している「あるもの」を目の当たりにするというのがざっくりしたあらすじ。かなり不気味だし、その中で描かれるホラー表現も個人的には好みだった。映画を通じて若干ジャンプスケアー要素は散見されたものの、主人公らが茂みに隠れるシーンなどは一定して緊張があったように思われる。現在パートも悪くはなかった印象だが観終えて数日経った今、特段思い出されるシーンはない。

またこの映画は「呪い」「スピリチュアル要素」をもとにしたホラー映画であり、それに現実味を帯びさせるためのファウンドフッテージ仕様だったとは思うが、身体が宙に浮いたりなど到底リアルではないと思えるシーンが度々あり、あまり必要のないシーンだなと感じさせられることは多かった。ただ視聴者が没入できるようになっているこの映画の構成はかなり秀逸だったと思う。「観覧車」「電車の向き」から映画はスタートし、無意識に映画に掴まれてしまう。その導入から始まっているからか、映画の中にある「問いかけ」にも無意識にリアクションしてしまう。そしてこの映画のエンディングも、掴んだ視聴者を絶望へ突き落とす構成になっていた。物語の掴みとオチに関しては文句もないほど素晴らしかった。

モキュメンタリー風だから仕方ないが「なんでそこでズームをする?」と思わせる変なカットがあったり、繰り返しにはなるが若干のジャンプスケア要素は気にはなったものの、視聴者の心を掴む導入とオチ・過去によってかなりのめり込める作品ではあった。一見する価値ありです。
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