ma

その夜の侍のmaのレビュー・感想・評価

その夜の侍(2012年製作の映画)
3.6
小さな鉄工所を経営する中村は、5年前の轢き逃げ事件で最愛の妻を喪い、抜け殻のようになりながらも復讐することだけを考えて日々を生きていた。
やがて、出所した犯人の木島のもとに、復讐までのカウントダウンを告げる差出人不明の脅迫状が届き始める。


堺雅人と山田孝之という、パワーあふれる狂気の2大俳優が対峙するだけでもとんでもないが、綾野剛、田口トモロヲ、新井浩文、谷村美月、安藤サクラ、高橋努、でんでん、峯村リエ、、、、これだけの実力派を揃えておいて、よくもきれいにまとめたものだ。

悪意の権化である木島。悪びれもせず人を蹂躙しながらなんとなく生きるこの男の恐ろしさが、なぜか人を惹き付けてしまう。でもそれはたぶん悪に魅せられるのではなく、その狂気の奥に微かに見える木島の怯えや危うさが、その人の心を捉えてしまうからではないかと思う。

絶対的な恨みを抱き続け、壊れそうになりながらもひっそりと木島を追い詰めていた中村が、最後の最後で怒りを手放すとき、ほんとうにほんの少しだけ、未来のかけらが見えた気がする。

そしてやっぱり安藤サクラは良い味出す。絢香の三日月、絶対歌いたいんだもんな。フルコーラスするかと思ってドキドキした。こんなにも陰鬱とした作品なのに、そういうリアルなユーモアもぶち込んでくるから、とても心が疲れたよ。
ma

ma