ゆず

みなに幸あれのゆずのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.5
幸福の絶対量は決まっていて、人類は限られたパイを奪い合っている、という考えのもと作られた不条理ホラー。自分たちの幸福のために他人を犠牲にできるか…。そのことで古川琴音演じる主人公が烈しく葛藤する。テーマは深いのだが、アプローチの仕方が不条理すぎて、終盤はあまりにシュールで思わず笑ってしまった。

現実には、女性の方が不幸を押し付けられている現状がある。(年中無休の家事や、賃金格差など)そういった観点からこのテーマを捉えれば、”田舎”に帰省した”女子学生”が…という筋書きはピッタリであるし、より現代社会の暗部に切り込む内容になったはずだが、どうやら制作サイドにはジェンダー問題を語る気はなかったようだ。

それどころか、幸福を享受する範囲が”家族単位”であるところは、昭和の価値観がそのまま出た設定である。もともとホラーな寓話であることは理解するが、設定の詰めが甘いので、制作サイドの古い価値観が滲み出てしまっていると思う。
まるで”因習村”のような出だしだが、本作の存在そのものが因習であるとも言えなくない。

ちなみに本作のレビューをAIに書かせてみたら、「『みなに幸あれ』は感動的で心温まる映画です」と書き出した。分からないくせにタイトルだけで判断して知ったかぶりするんだな、ChatGPTは…。それが一番こわかった…。
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