花火

霧の淵の花火のネタバレレビュー・内容・結末

霧の淵(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

大部分の場面がフィックス撮影で撮られ、頻繁に無人の実景カットを重ねたシークエンスが挟まれ、窓枠を筆頭にフレーム内フレームで人物が区切られる。そして何より寂れた村のロケーション。自然や田舎の静謐さというのを飛び越えて、どこか死の気配すら全編漂っているのが不気味。隠れるにはちょうどいいと劇中語られる山にかかった深い霧や、会話中もひっきりなしに風で震えるガラス窓の音も、なんというか登場人物全員幽霊なんじゃないかという想像を駆り立てるところがある。特に、民俗学リサーチのために旅館に泊まりに来た大学生グループを旅館を営む堀田眞三・水川あさみと三宅朱莉らが見送るカットは、屋内にあるカメラが外に居る彼らをガラス戸越しに区切って写し出すので、余計にここに取り残されているという感覚を醸し出す。この道を挟んで二棟ある旅館と、川で区切られた山間というショットは相似関係にあるのだろう。そうした中で、突然消えた祖父を探すために通行止めの道を三宅と水川が歩きながら劇中初めてというくらいまともな会話を交わす姿を正面から捉えたショットはトラックバックの移動撮影で撮られており、さらに煌々と日の光が差していることもあって強く印象に残る。
山奥にある祖父の家でラジオをかけ横たわる三宅、ちょうど首のところで前に柱がありまるで頭部と胴体がバラけたかのように見える画面が徐々にズームアウトしていくと左に堀田が座っているというカットは、その後の嘘みたいに賑わうシーンを見るまでもなく、明らかに現実ではない境地に達していて戦慄させられる。
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