契約書もろくに読まないまま新たな星での移住計画のために消耗品〈エクスペンダブル〉に志願したミッキー。ある理由で追われる身となり地球外へ逃げ出すのが目的だったが、移住計画で彼に課された仕事は人の安全が確保されるまで実験台となり、繰り返し命を落としては復活するという無限地獄のような労働だった。
プリンターで肉体を複製し、記憶データを移行することで死んでも新しい肉体で復活させることが可能となった近未来。タイトルの「ミッキー17」とは17番目に生まれたミッキー、つまり過去に16人のミッキーがプロジェクトのために命を落としていることを意味する。
原作『ミッキー7』は未読なのでどこまで忠実なのかわからないけれど2022年出版にしてはテーマに目新しさは無いような。
格差と不平等はポン・ジュノ作品の中で度々描かれている共通テーマだけど、本作ではなかなか深層まで届いてこない歯痒さ。面白くなりそうな小エピソードが散りばめられているのに、どれもが掘り下げられることなく展開が進むのでもったいない。加えるなら登場人物のキャラ付けも軸がブレブレな印象を受けてしまった。特に主人公のミッキー(ハバネロミッキー、マイルドミッキーどっちも)に感情移入できず、単に愚かで可哀想な男としか見えずに二重三重に可哀想になった。けどロバート・パティンソンはしっくりハマってる。
何はともあれシリアスなテーマのフリしてバカバカしいブラックコメディなのは流石ポンジュノ。ナーシャと二人で爆笑しながら作ってたSEXの体位〈C-3〉の盛り込み方とかどういう発想??17号と18号で3Pのトンデモ展開を期待させるとか狂ってる。
原住生物クリーパーのデザインもキモカワ趣味が炸裂で。グソクムシ×クマムシみたいな。オクジャとかグエムルとか昔から変わってない。本当に好きなんだね。後半はほとんどナウシカ。みんなでミッキーをエッホエッホ♫と運ぶ様子が可愛すぎる。
そして私がこの映画で最高!と思ったのは人間プリンターからミッキーがプリントアウトされる描写。毎回ぎこちなくガタガタと目詰まりした感じで出てくるセンスが素晴らしい。大阪万博でこれが展示されたら絶対行くのになあ。万博では「ミニ心臓」というものが展示されるそうですが、まだまだ人間コピーは遠い未来。そんな未来は永久にない、と信じたい。