Yuta

君たちはどう生きるかのYutaのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

初日朝一鑑賞。

開始5分、戦禍のシーンから引き込まれた。炎や人物の表現に手書きアニメーションの新しい境地があり、冒頭が一つのクライマックスだった。

階段を駆け上がる動き、青鷺の滑空、パンから滴るジャム、生き物が群れて迫りくる様子など、動作の細部に哲学が込められていて、動きの表現の豊かさがジブリ映画の魅力の一つだったと随所で感じ取ることができる。

主人公の真人が迷い込むのは、千尋、ポニョ、もののけ姫、ハウルなど、過去の宮﨑作品のエッセンスが混じり合った美しく不思議な世界(今作は、特に背景の絵が美しい!)
その美しくも不安定な世界を築き、守り続けた老人(大叔父)に、監督自身の考えや生き方が重なる。老人から自身の後継を託された、若い世代代表の真人は、老人とは違う道を力強く選ぶ。そこに、監督が憂いや叱咤を描きたかったのか、希望を描きたかったのかは推し量れなかったが、きっとそのどちらでもないように思う。
 
「下の世界」に落ちてすぐに登場する巨大な石棺。入口に掲げられた「我を学ぶものは死す」という文字。結局この伏線は回収されるのとはなく、誰が眠る墓地であったのかは最後まで明かされない。本作制作中に亡くなった盟友高畑勲であったのか、はたまた自身の死のイメージをそこに重ねたのかわからない。ただ、82歳になる監督自身が向き合う死や、次世代への思想の継承などが大きなテーマになっていた。

この映画は面白い、面白くないとか、理解した、理解できなかったという軸で語れるものではなかった。分かりやすいカタルシスもない。タイトルが象徴する、強いメッセージ性もダイレクトに感じ取ることは難しい。
ただ、宮﨑駿監督の偏愛が凝縮された純度の高い世界であり、アニメーションの美しさに理屈を超えて浸ることができる、まるで海外の絵本を捲るような映像体験だった。
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