Yuta

瞳をとじてのYutaのネタバレレビュー・内容・結末

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ビクトル・エリセ監督、31年ぶりの長編。
『ミツバチのささやき』から数えると50年もの時を経た新作。『ミツバチ〜』世代ではないけれど、学生時代に『ミツバチ〜』と『エル・スール』を観ていたこともあって、気が遠くなるような年月を経て監督がどんな作品を撮りたかったのか、興味があった。

会話劇が中心の169分。
前半から中盤にかけては、単調に感じたり、冗長に感じる瞬間はあった。
気を抜いたら眠りに落ちてしまいそうで、しっかり瞳を開いて、スクリーンをみつめていた。

過去のエリセ作品を彷彿とさせる、自然の光を効果的に使った印象的なシーンや、詩情あふれるセリフも多く、全体を通して美しい映画だった。

この映画のクライマックスの一つ。アナ・トレントが、50年の時を越えて、同名の役で、50年前と同じセリフをつぶやくシーンは、映画が時空を超えたような、なんとも言葉にならない感情を覚えた。

また、登場人物たちがスクリーンからこちらをまっすぐに見つめるシーンでは、役者が実際に目の前にいて、自分と目があって直接訴えかけてきているような、強烈な感覚を覚えた。

作品全体を通して、たくさんの暗喩が散りばめられていたり、そもそものモチーフがおそらく監督の私的な何かであることから、ぼくには、監督の意図や映画を通して伝えたかったであろうことをしっかり理解することはできなかった。当然、見終わったあとは、もやもやで心が満たされている状態だったが、決して心地の悪いものではなく、なんとも豊かなもやもやだったと思う。
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