なお

君たちはどう生きるかのなおのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

宮崎駿版「不思議の国のアリス」(ていうか「千と千尋の神隠し」もそうだったんだけど)、そして自身の過去作品のセルフオマージュ、だって石の世界の、石の13個って、その意味は、、、、ねえ。

公開2日目の2023年7月15日に、TOHOシネマズにて鑑賞。

宮崎駿自身の「ハウルの動く城」と「千と千尋の神隠し」のフォーマット(という箱)を使って、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を宮崎駿さん解釈でアニメ化したような作品なんだけど、問題なのは、「千と千尋の神隠し」のあのシーンやあのシーンをそのまま使い、「紅の豚」のあの有名なシーンを別の乗り物に置き換えてそのまま使い、「となりのトトロ」のあの有名キャラをほとんどそのまま色違いで使い、「もののけ姫」のあのシーンのゾワゾワする感覚をそのまま使い、「崖の上のポニョ」の水のアニメテクをそのまま使い(「ハウルの動く城」でも似たシーンあったね)、そしてそして、まさかまさか、「ハウルの動く城」の有名なあのシーン(ガジェット)を、意味合いも情景描写もそのまま使い、クライマックス前には、「カリオストロの城」のあのシーンを少しだけバージョン変えて使うという(もちろん、その他にもいろいろ。ラピュタもあったし、ナウシカももちろんあった)、まさに、宮崎駿自らが「自分のアニメ作品史を1つの作品の中で表現してみました」的作品です。

石の世界の13個の石と、ジブリ作品の作品数を数えると、ありゃあらあら、数がぴったり一致するとか、なんとまあ、ここまで暗喩という名の「あからさまな一致」を見せられちゃうと、もはや、鑑賞するたびにメモが必要かと思っちゃう。
オチ(伏線回収のラスト)までが、あの傑作のあれをまんま使うとは、、、、いやはや、宮崎駿さんの潔さというかなんというか、、、

黒澤明監督の「夢」しても、内田吐夢監督の「真剣勝負」にしても、天才監督の晩年の作品はえてしていろんな想いを詰め込みすぎて、一般の観客から乖離した作品になりがちなんだけど、この作品も、おそらくは世間の評価としては、そっち系、つまり「宮崎駿もわけわからん作品を作っちゃったな」という流れになっちゃいそうなんだが、ただし「石の世界」=「ジブリ&テレコム(カリオストロの城)&トップクラフト(風の谷のナウシカ)」と考えると、ものすごくスッキリとした分かりやすい物語なのかもしれない。彼(宮崎駿)の想う、ジブリという世界の後継者問題やら、自分が作り上げてきた世界と現実との乖離とかを、案外、とっても分かりやすく記号化している作品なんだと思います。

82歳にして、そういう換骨奪胎をした上で作品を作り上げることができる宮崎駿って、すごいです。
彼の天命がいつ尽きるのかは分からないけど、いい意味で調子にのって、もう一作、作って欲しいなあ、、、。今度はそれこそ初心に帰って、「未来少年コナン」「天空の城ラピュタ」のような純粋な冒険活劇を。

鈴木さん、どうでしょうか? 宮さんを説得してください
なお

なお