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君たちはどう生きるかのreliableFilmManのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0
「君たちはどう生きるか」は制作人の集大成と思わせる、かなり示唆に富む作品だったと感じました。駿(ジブリ)版マルチバース。

【メッセージ】
『どの世界にも生命の存続が危ぶまれるような争いがあり、過去に日本も悲惨な戦争を経験している。世界の平和、平和の中で紡がれる歴史は様々な事象が絶妙なバランスで積み上げられていくことで成り立っている。今、現実世界では西側諸国と露との争いが繰り広げられている。再びバランスが崩壊しそうな時代において、これからを担う世代である君たちはどう生きるのか?』というのが今回の大きなメッセージだと感じました。

【時代・舞台設定】
〇現実
太平洋戦争後半。主人公の少年(マヒト)の疎開時にサイパンでの戦いが始まることが知らされているので1944年中盤と思われる。
〇別の世界線
生と死が交じり合う世界。海岸線の風景や石造りの墓(ストーンヘンジのような)から英国付近の欧州ではないかと思われる。

【別の世界線の世界観】
〇白い生き物
白い可愛い生き物が天に向かって飛んでいき、最後には現世で人間に生まれ変わるとされている。別の世界線には死者や動物、人間が生活しており、現世と行き来する世界観は輪廻のように感じられる。
〇悪は悪なのか
ペリカンは白い生き物を食らう悪い鳥として印象付けられるが、その後、老いたペリカンが過去の歴史を吐露する。『ペリカンは食べるものがなく、しかたなく白い生き物を食べるようになった。かつては様々な土地を転々としていたが、今は一定の場所にしか住まなくなり、飛ぶことを忘れつつある』と語る。この一連の流れから、物事の事実は多面的である。若者は小さくまとまるのではなく大きく羽ばたけといったメッセージがあるように思えた。
〇積み石
別の世界線は積み石のバランスで成り立っている。マヒトが大叔父に会う道中、多くの積み石でできた山を登るが、それは過去に何度もバランスが壊れて大きな破壊が起きたことを暗示しているように感じられる。大叔父は別の世界線で積み石を管理する人物、神のような存在になっていた。
〇インコ軍団の総統の破壊的な行動
インコの軍団はナチスを思わせるもの。インコの総統は神のような存在(大叔父)に貢物をして世界を統治しようとするも、大叔父が積み石で世界を統治していたことを知り、裏切られたと感じて罪石を破壊。その衝撃で世界は崩壊する。
〇西洋の神話的な雰囲気
大叔父がいる場所は楽園、エデンのような場所。別の世界線が崩壊したとき、モーゼの海割りのようなものが発生して主人公たちを必要な場所へ導いた。

【米津玄師のエンディング】
エンディング曲に序盤はバグパイプから始まっていたことを考えると、本作は西欧や英国の神話?の雰囲気を取り入れているように感じられる。