田舎

君たちはどう生きるかの田舎のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.9
現実(一元/武器(人工))と対比する虚構=映画(多元/火(魔法))。

キャラデザ、ストーリー構成、進行の各所にセルフオマージュと思わしき要素が散見されたこともあり(「このシーン、〇〇っぽい!」がたくさんあったでしょう)、宮崎駿/スタジオジブリの総決算的な作品に思えた。

総決算的ということもあって、考えようと思えばいくらでもドツボにハマれる複雑な語り代のありそうな作品ではあるものの、表面上の「主人公(眞人)の冒険活劇/成長譚」というプロットは明快で、王道とも言えるもの。
(「これどういう意味?」「なんでそうなるの?」という心の声が何度も浮かんだ人でも、ストーリー自体には振り落とされることなくラストまで付いていけたでしょう)。

故に、宮崎駿の作家性がこれでもかと浮かび上がる。

上の世界は「現実」であり、下の世界は「ファンタジー=虚構(映画)」という対比構造ですよね。大叔父が、ファンタジーを創り上げた宮崎駿自身であると暗に示していることは、自身の後継ぎを探している様子からも伺える。何ならあの塔、スタジオジブリそのものにも思えた。正統な後継ぎもおらず、崩壊するファンタジー=ジブリ。

エンドロール後、「何が言いたいかわからなくて微妙だった」的なことを言ってる人を4人くらいは見かけたのだが、そもそもジブリ映画にどんなイメージ持ってるのかなぁ。そして映画というアートフォーマットに、簡潔明瞭なメッセージ、支離滅裂でないストーリーテリングを絶対的に必要なものとして求めているのだろうか。

私が受け取ったメッセージの一つを敢えて簡潔明瞭に表すのであれば、「映画(ファンタジー/虚構)には限界がある」「映画を見るのは構わないが、最終的には外に出ろ」という事ですね(雑な認識で申し訳無いですが、エヴァもそんな感じなんだっけ?)。いくらイマジナリーなものと触れ合っても、所詮それだけではそれだけでしか無い、という。

80歳を過ぎてなお健在な(寧ろ増している)尖った作家性による意欲作であることは間違いない。これはパンフ買う。ただ、私個人の単純な好みの話であれば、『千と千尋』や『もののけ姫』には及ばないという感じ。フラットな状態で映画館で見れたのは良かった。

余談
ジブリ全作品見たわけでもない私が知らないだけかもしれないですが、宮崎駿の母(になること)/妊娠/出産に対してのイメージとか考え方については気になりました。
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