田舎

ドライブ・マイ・カーの田舎のレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0
『クラッシュ』のリバイバル上映以来、半年以上ぶりの劇場へ。というか映画見るの自体も超久しぶり。

原作となった『女のいない男たち』から「シェエラザード」のエピソードで幕を開けるも、作品理解の副読本になるのは村上春樹ではなくチェーホフでしょう。
もちろん原作短編集で描かれている男たちの内省~自己理解、救済(的なもの)を下地にしつつも、それだけではない多量の濱口エッセンスを随所に感じ取れた。

そのエッセンスの一つとして、家福の用いる、感情を入れずに台詞を棒読みで習得していく演技指導の方法(本読み)が濱口メソッドそのもの(少なくとも私の知る限り『寝ても覚めても』では採用されていた方法)だったというのがあるが、これは家福=濱口監督であることの証になり得るものであるだろうか。もしそうであるならば、濱口監督にとっての「(いない/いなくなった)女」や「演技(を続けながら生きていくこと)」とはいったい何なのだろうか。

濱口監督にとっての女、といえば、パク・ユリムが伊藤沙莉にどことなく似ててちょっと笑った。濱口監督の好きな顔なんだろな。また濱口監督らしさみたいなところで言えば、「今生きているものは、何があろうと生きていかなければならない」「残された者は去ったものの事を語り継ぐ必要がある」というメッセージは今作にも感じました。

3時間も尺あるように感じなかったのだけど、濱口監督は観客に集中を強いるための波の作り方というか、注意の惹き方が上手いなぁと思った(オーディションでの手話演技による無音、唐突なゴミ処理施設でのインダストリアルなカット等)。

一つだけ気になったんだけど、ゴミ処理施設外の海沿いウッドデッキみたいなとこでの喫煙シーン、家福はまだしも、みさきも携帯灰皿持ってるんだ、と思ってしまった。映画的正しさというか、少しの居心地の悪さが個人的にはあった。細かいけど、明確なタバコの火消しは映像に乗せなくて良かったのでは?と思っている。
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