颯空

君たちはどう生きるかの颯空のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

もしこれが遺作になってしまうのだとしたら、宮崎駿の作家人生はものづくりに携わる人間として本当にこれ以上ないほど理想的と言って他ならないと思う。素晴らしい作品だった。

宮崎駿100%みたいなのは友達からちょっと聞いてて、でもこれは成分的な話ではなく本当に宮崎駿の人生そのものが詰まっていたからこそのものである感じた。男一人裸一貫、自分の持てる全てを出し尽くし、「さて、僕はこうやって生きてきた。君たちはどう生きるか」と彼から問いかけられたような思いで、観終わって数日たったけどもその問いかけが今も頭から離れない。

新しくも確かに見覚えのある、ジブリ作品のセルフオマージュの世界、その世界が最後一瞬にして崩れ去り、その全てを享受したまだ何も知らない少年がその中から現れる。カルチャーの輪廻がそこで体現されていて、その少年はきっと俺でもあり誰かでもある。

この構図は庵野秀明のシンエヴァともどこか似通っていて、対話、そして継承、他者への受容、許し、自分の人生を語ること、をまるで人生の幕を閉じるかのようにその世界の重鎮が、長い目で見た時にほぼ同じようなタイミングで似たようなメッセージを打ち出してきた。

2020年代に入って個人的には今年、2023年がその1つのターニングポイントになる予感がしていて、この作品も例外ではなかった。どう考えても時代が変わることを予感せざるを得ない。

先人たちが打ち立ててきた功績も功罪も全部背負って、今やっと社会を歩み始めた無知で幼い俺は人間としても表現者としても「どう生きるのか」。そのたった一つの大事なメッセージが今重く突き刺さっていて、その姿勢を示すのが自分の人生なのかも知れない、と感じた。
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