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君たちはどう生きるかのMrOwlのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.5
宮崎駿監督の大作としては最後と言われる作品という周辺情報と映像の予告編も全くなかったことと、「君たちはどう生きるか」というタイトルから、これまでのファンタジー要素は少なく、どちらかというとメッセージ性の強い、リアリスティックな作品なのかなと勝手に想像し、観ようかどうか迷っていましたが一応、観てみました。自分の勝手な想像とは違い、本作もファンタジー要素満載、不思議要素満載の映画でしたね。その点は良かったです。印象としてはジブリ作品の中の「崖の上のポニョ」に近しい作品だな、と感じました。宮崎駿さんの作品にはご自身の死生観が反映されており、それが色濃く出るか、出ないかで印象が異なると感じます。本作は「崖の上のポニョ」と同様にその「死生観」が色濃く反映された作品でしたね。宮崎駿さんの生い立ちを見ますと、数千人の従業員を擁した一族が経営する宮崎航空興学の役員を務める一家の4人兄弟の二男として東京市にお生まれになり、比較的に裕福な暮らしをしていたという。太平洋戦争が始まり、宮崎航空機製作所が宇都宮に移転したため、幼少期は家族で宇都宮に疎開し、小学校3年生まで暮らしていたそうですから、本作はご自身の体験と、タイトルになっている「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著の児童文学)の主人公コペル君との共通点(コペル君の父親は亡くなるまで銀行の重役で、家には女中とばあやがいる裕福な家庭環境)を融合させて作品にした、と理解しました。正直、ファンタジー要素もしっかりあるので、タイトルは「不思議な森」とか「叔父さんの塔」とかにした方が良かったんじゃないかと観賞中に感じたんですが、舞台装置が文学作品の「君たちはどう生きるか」との共通点が多いため、タイトルを変えてしまうと、逆に「これ「君たちはどう生きるか」をネタ元にしてるのでは?」とネガティブに捉えられてしまうだろうな、とも理解しました。本作はキービジュアルになっている青サギ以外に、他の生物も出て来るのですが、中終盤で出て来る生き物が、自分にはイマイチでした。もっと別の種の生き物で良かったんじゃないかなと。または様々な種を出しても良かったんじゃないかと思ってしまい、終盤は少し没入感が薄くなってしまいました。その種の造形も好きな造形じゃなくて、個人的にはそこが残念でしたね。これまでの作品の良さである動きの表現、少年少女の冒険譚、不思議なもの、不気味なものを通して命や生死を感じるような演出は良かったので。タイトルで少し躊躇されている方は、ファンタジー要素はしっかりあるので楽しめる映画だと思います。
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