トッシー

君たちはどう生きるかのトッシーのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

事前情報一切なし!

…そんな異常事態の中、
タイトルの説教臭さから
絶対、おじいちゃんの
説教映画だと思ってた。

そして、そう思ったうえで!

前作、『風立ちぬ』で
クリエイターの叫びと言う形で
人間の欲望と純粋さを描き切り
完璧に近いとも思われる
引退を飾った
国民的映画監督が………

それを撤回してまで!
(まあ、いつもの事ではあるけれど)

世の中に説教をかましてくる!

…かもしれない事に
逆に興味がありましたのよ。

だから、
ワクワクしながら映画館行った。

そんでちょっと
シュンとしながら待機よ。
説教待機。

…けど、
…そしたらハヤオ!
全くほとんど説教!

してこねえじゃねえか!

今回の映画は、
ハヤオ、得意のファンタジー
不条理系 不思議の国のアリス!
そこに少年の葛藤と成長を絡める!

大人向けだった
『風立ちぬ』からも一転!

王道エンタメストーリーだった!



…おい!どうなってんだ!

こっちは
説教喰らうつもりで来てんのに!!

話が違うじゃねえか!!


…とかね、
勝手にちょっと
がっかりしたりしてました。



けど、…それにしても

事前に映画の内容が
何も分からない
この宣伝方式は斬新でしたよね。

ハヤオが監督って事しか
分からないもんね。

全く何が出てくるか分からない中
ドキドキしながら
上映を待つ感覚は
やっぱり非常に斬新でしたよ。

勝手に何か(説教…)を期待して
ここまでがっかりしたり、
逆に喜んだりできるのも
本作ならでは味わいでしょう。

こんな感覚は、
もしかしたら今後、
2度と味わう事ができないかも
しれませんよね。

その意味でも
この映画とその試みは、
とっても貴重なのだと思います。



…でも、この感覚
何だかどっか懐かしいんですよ。

どこで感じた感覚だったかな…?

ちょっと記憶の海にダイブして
考えてみれば

…あれだ、あれ!

そう、ファミコンのカセット!!!



…その昔、TVゲームの黎明期
任天堂のファミリーコンピューターが
発売されて、メチャ流行ってたころ

ファミコンの
ゲームソフト = カセットが
いっぱい発売されたんですよ。

とにかく出せば売れるぜ!
…みたいな無茶な感覚で

色んな会社が、玉石混交
本当にいっぱい
ファミコンのカセット
出してたように思う。

でも、今みたいに
ネットがないからね
情報誌はあったけど、
ゲームの情報があまり入ってこない。

ゲーム内容の分からんソフトが
いっぱいあったのよね。

そんな中で、
周りの大人が時々、
突然言うわけです。

「おい、今日は
ファミコンのカセットを
買ってやる!
何でも好きなものを
選ぶが良いぞ!」

そんな感じで、おもちゃ屋さんに
連れてこられる訳ですよ。

これはもう、
スーパーラッキータイムなんですが、

正直、
突然、何でも好きなもの
…って言われても
困ってしまうんですよね。

情報がないんだから!
何が面白いのか分からない!

そんな中で
ゲットできる情報は
おもちゃ屋さんの店頭に並んだ
ファミコンカセットの

タイトルと!
発売メーカーと!
パッケージの箱のイラストのみ!

けど、小遣いの少ない
ガキんちょからしたら
このスーパーラッキータイムは
超絶貴重!

絶対に外したくはないのよ!

できたら、
FFとかドラクエとかマリオみたいな
大当たりを引きたい!

加えて、友達も知らない
隠れた名作を見つけて
自慢もしたい!!!

だから、脳ミソ
フル回転で考えるよね。

そんで、これだ!!! …と!

こんなにかっこ良くて!
ミステリアスで!
アドベンチャーな絵が!
カセットの箱に
描いてあるんだから!

きっと!とんでもなく
面白いに違いねえよ!!!

そうだ!そうに決まってる!

おじいちゃん!
これ!
これ買って!



この、スペランカー ってやつ!!!



………
…………
………………


………懐かしいなあ。

そうやって
スペランカーとか
ボコスカウォーズをゲットして

心に深いトラウマをおった
ガキんちょが
当時はたくさんいたと思いますよ。

僕も、ちょっと心が
死にそうになったし、
文字通りに死にまくった。
(…スペランカープレイ中は)



この映画は久しぶりに
その時のそんな感覚を
思い出させてくれたんですよね。

ワクワクしながら
スペランカーを
ファミコン本体に突き刺して、

「一体どんなゲームだろう!
きっとタフな探検家が
この箱に描いてある幽霊と
激しいバトルを繰り広げる、
ハードなゲームに違いない!」

…と、勢い勇んで
電源を入れた
あの時のあの気持ち………

ボコスカ ウォーズの時は……

…ちょっともう思い出せないけど

そんなドキドキとワクワクを
本当、久しぶりに
味あわせてくれたんですよ。

もう、それだけで
映画館まで行った
価値はありました。

ありがとう、ハヤオ。
いや、この場合は
ありがとう、トシオか。

映画を観るまで
本当にドキドキできたからね。

こんなの多分
日本ではハヤオくらいしか
できないでしょう。

本当にありがとうごさいました。



…しかし、一方で
肝心の映画の内容はどうだったのか?

『君生き』は、お前にとって
スペランカーだったのか?
それとも大当たりだったのか?

この映画を観て
お前の心は死んだのか?
生き残ったのか?

…と聞かれたら

死にはしなかったし
スペランカーや
ボコスカウォーズでは
なかったですね。

…………けど、

FFとかドラクエとかマリオとか、
ゼルダとかでもなかった。

そうだな、うーん。

例えるなら

ドルアーガの塔。

うんそう。

ちょうど塔繋がりだし。
ドルアーガの塔。これだ。



ドルアーガもね
名作だとは思うんですよ。

だけど、やっぱり
ハヤオがやるんだったら
そこはFFとかドラクエとかマリオ
…であってほしかった。

それが正直な感想です。

ドルアーガじゃないだろう、と。

だって、途中、
ちょっと寝そうになった。

しかも、塔の中に入って
不思議の世界に入ってから
眠くなったからね。

あっ、ドルアーガの塔を
くさしているわけではないですよ。
どちらも僕には合わなかっただけ
…ってだけかもしれないですけどね。

それにしても、

ハヤオってやっぱり
画でぶん殴ってくるタイプの
映画監督だと思うんですが

そこが弱かったかな………

溢れるようなイメージの奔流、

ちょっとした動きさえ
ダイナミックな激動に変える活劇感、

そんなのが、特に後半は
全然なかったように思いますね。

オープニングの
火事のシーンは本当に
凄かったんですよ。

目を奪われて、心を掴まれて
ハヤオ、やっぱり凄い!
…ってなりましたよね。

けど、画的に凄いと思ったのは
そこだけでした…

キャラクターで言うと
ばあちゃんズは良かった。

ばあちゃん達のピクシー感は
この映画の他のどの要素よりも
ファンタジーだったと思う。

それと、継母の夏子さんも
やたらセクシーだったのが
良かったです。

峰不二子からさえセクシーを
取り除いた男ですからねハヤオは。

色んな含みがあるんだろうけど、
大人のセクシーな女性が出てきて
それが自分の母親になるって展開は
何か屈折した欲動も感じさせて
単純にとても、ドキドキした。

でも、そこ以外、
キャラクターも微妙でした。

だから他は何か、
既視感のあるパットしない
映像と展開………

そして、寝そうになると………




やっぱり、
歳をとったんですよね。
ハヤオも。

もう、昔みたいには
画を描けなくなってるんだろうし…

イマジネーションにも
衰えがきてるんじゃないかな?

それは仕方ないですよ。
だってもう
いいおじいちゃんなんだから。

あの狂ったような作画や
イマジネーションの大爆発を
今までみたいには
とても出せないですよ。

だけどもあのハヤオが
キャリアの最後の最後に
そんな姿を見せてくるってのは

逆トム・クルーズ的であり
このタイミングでは
とても感慨深いし

「君たちはどう生きるか」
…と言うよりか

「俺はこう生きた!まだ生きてる!」
…って宣言みたいなものに思えてね

映画ファンの日本人としては
ちょっと、しみじみしてしまいました。



でも、この映画、
小学生に聞いたら、
メチャクチャ
面白かったらしいんです。

なるほどなあ。

ハヤオはこれまでも
子供達のために
映画を創ってきた人だから

「風立ちぬ」を経て
また、そこに戻ってきたんかな?

大人を巻き込む力は
弱くなってしまったけど
純粋な子供達にはまだまだ届くし
そこだけはブレてない。

生きてるんですな…

まだまだ全然生きてる。



一体どこまで生きるのか?

もっと、ヘコヘコでボロボロの
姿を僕らに観せてくれるのか?

こうなったらハヤオの最後を
しっかり見届けたいですね。

次作があるのかどうか?
それは分からないけど
あれば絶対映画館へ行く。

その時は
また、今回みたいな
秘密主義でやってほしいな。

今度こそ説教してくれても
全然オッケーだし

最後の最後は、
いっそのこと
スペランカーになっても
良いですよ!

スペランカー、
なんだかんだで
愛されゲームだからね。

ハヤオのスペランカーでも
ハヤオのボコスカウォーズでも
僕は最後までしっかり見届ける!






…ああ、



何だかスペランカー
やりたくなってきた。

ボコスカウォーズも…
ちょっと…
やりたくなってきたなあ。

そんな

ハヤオ最新作でした。


2023-24
トッシー

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