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君たちはどう生きるかのKのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.7

それでも現実世界を生きる


本を読み、過去を学んだ学者は(戦争を経験していなくても)世界の在り方を知り、絶望し、空から降る奇跡に魅了され幻の世界を築いた。

妹は姉の子から愛されぬまま、自分も愛せぬまま、苦しみに耐えるうちに同じように現実から離れた世界にとどまることを決める。

一方で理想の世界にも悪は棲み着き、現実世界では脅威ではないものが人間を喰らう。どんな想像の世界もバランスを崩し、悪が住まう。
ワラワラを作ったところで、そこを地獄だという生き物がいる。

創造主は救世主を待つ。たどり着いた少年は自分と同じように現実世界を好まず、戦争の最中最愛の母親を亡くし、父に振り回され、孤独に生きる少年。

しかし彼は幻の塔を選ばない。戦争も、死も、孤独すらも経験した彼は、真っ直ぐに目的を見つめ、現実世界を目指す。

(夏子をお母さんと言い、救おうとするシーンが印象的だった。彼は真っ直ぐだけど他人を守る嘘がつける子だから、真意は分からない。でも誰かを救うためにかける言葉を持っている。)

君たちはどう生きるか、たとえ死ぬと分かっていても未来の息子のために選択をする母親と、現実を生き抜く少年と。
厳しく辛い世界も生き抜いて先につなぐ。

宮崎駿が産まれた年は、真珠湾攻撃の年。
戦争の時代を生き抜いた。彼の生きる意思と生きた証がこの映画にも宿り、世界から注目されて、未来永劫刻まれる。ジブリをきっかけにこの映画を観た人たちや、自分のようにほとんど観たことがない人にまで、繋がっていく。
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