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哀れなるものたちのKのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.9

POOR THINGS

女性が抑圧から解き放たれる様を一生を通じて体験できる素晴らしい作品。
とどまることしかできなかった人間が、第二の人生で知識を学び、快楽と悲劇を知り、自らの足で立ち、お前たちが poor な存在だと知らしめる。ベラを我が物にしようと(牢獄に入れようと)、簡単に出来ると思い込んだステレオタイプの男性が知識や欲や暴力で彼女を抑え込もうとするも、実は振り回されていく様があまりにも滑稽で、潔い。

観ている途中、いくら女性の生き様を描いていたって、とはいってもエマ・ストーンも監督に脱がされていて、矛盾してないか?
と思う瞬間があったがその考えこそ poor な発想だと思い知らされる。エマ・ストーンほどの女優が選ばずにこの役をやっているわけがない、彼女自身が選んでやっているのだ。見ている自分も浅はかな考えだとベラ(≒エマ・ストーン)に真っ直ぐな言葉の銃口を突きつけられている。哀れだと思う。


この作品は、観客に体験させる。あまりにもステレオタイプすぎる男性たちの登場でやや辟易とするが、中和するほど映像が美しく、その主張もすんなりと身体に入っていく。彼女の足取りが軽やかになるにつれて、世界が色を帯び、そして景色が鮮明になっていく。

この作品にたずさわるすべての人がテーマを持っているにしろ、テーマなど存在しないにしろ、込めた思いが美術と音楽と演技と脚色と作品から伝わってくる。これぞ映画の素晴らしさと思えるような、素敵な作品でした。
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