ハル

AFTERGLOWSのハルのレビュー・感想・評価

AFTERGLOWS(2023年製作の映画)
3.8
インディーズな尖り方、物語的にも映像的にも攻めている作品。
全篇モノクロ。

奥さんに自殺され、半ば自暴自棄で毎日タクシー業務を行う守島。
ある時お客さんの中に奥さんそっくりの女性を見かけることで、彼の行動は常軌を逸脱してしまう。
奥さん、そっくりな女性の二役をMEGUMIが演じている。

義理の母親からは「あの娘はいつも息苦しいと言っていた」と、自分の知らない事実で責められてしまい、一見ひたすらに悲しすぎる男の物語。
ショックからか、精神疾患も患わっており、発作が出ると薬を飲むの繰り返し…本当に痛々しい生活。
しかし、途中から守島の狂気性が徐々に見え始め「お、おいマジかよ…?」と冒頭抱いていた哀れみの気持ちが闇に飲み込まれていく。
伏線とまではいかないけれど、色々仕込みもされていて、主演の朝香賢徹からはこの作品にかける強烈な想いを感じられた。
熱量とパワーで押し切られてしまう鋭利なプロット、哀愁と執着と狂気をミックスしたダークな雰囲気の一作。
ほぼ事前情報なしで観ましたが、ズシッと重いハードな仕上がりでした。

少し余談。
劇場がユーロスペースだったので(知っている方はイメージ出来るはず)演者の方々が一階の通路にいたんだけど、唯一顔を知っている出演者のMEGUMIさんもそこに。
エレベーターを利用しようとしている一般の方を見かけると「どうぞ、使ってください」と告げ、自分は階段でスタスタ上っていく。
「こんなに謙虚な芸能人いるの?」っていうくらい気遣いのできる姿に感動。
上映前もロビーにいて談笑しているし、本当に気取らずな方だった。
女優として頭角を表している理由はこういった日頃の姿勢の積み重ねなのだろう。
人にやさしく誠実に生きている人はやはりチャンスを掴むんだよね。
英語も話せるようになっているし、才能+努力の組み合わせに勝るものはない。
あ、当然メチャクチャ綺麗で可愛かったです。

また、主演の朝香賢徹さんは俳優人生18年で初の長編映画主演との事。
舞台挨拶中も感謝の言葉を真摯に伝え、上映後も入り口で観客一人ひとりにお礼の言葉を重ねていた。
芸能界という実力至上主義の世界、結果が全てなんだろうけど、こうした地道な努力と継続が形になる瞬間を見られたのは心にグッと来る。
そういう素敵な瞬間に立ち会えたことが純粋に嬉しかった。
主演を張る、その難しさと素晴らしさを彼の姿勢から学ばせてもらい、こちらこその感謝の気持ち。
ハル

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