めんたいこ

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのめんたいこのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
1.0
表現をすることと、しないことと。

ここんとこFilmarksでは高評価なものしか記録しないという運用をしているのだけれど、本作については表現を生業にしているものの端くれとして思うところがあり筆をとった。

本作の関心は「最も黒い絵」をどう表現するのか。というところにあったんだけど、全く向き合ってなくてビビった。というお話。

僕の大好きな作品「プロミシング・ヤング・ウーマン」「ファニーゲーム」の暴力描写や「桐島、部活やめるってよ」の桐島その人のカリスマ性など、描かないことで逆説的により深く描くという手法は映画というメディアに残された発明で、「絵にもかけない美しさ」や「天使の歌声」の描き方としてはひとつのクレバーな解決策といえる。

それとは別にSINGのように真正面から描き切るチャレンジも非常に好ましく、初見では思わず声が漏れたほどだ。(続編のSING/シング: ネクストステージは少々残念だったのだが)

閑話休題、本作に戻ろう。

いや。いうほど黒くなくない?その絵の具。本作の感想はそれに尽きる。仁左右衛門の指についた顔料もテカってるし、そこは嘘でもいいから#000000にしろよ。画角に収めるのであればその不自然なほどの黒を、どんな手法を使っても描き切るべきだろうよ。

奈々瀬の髪もいうほど真っ黒じゃないし、言うなら若干茶色くね?もにょるなー。

そして真っ黒の絵画という割に一見して女性の絵が描かれているのが本当に萎えさせる。ダサいにもほどがある。

そしてキャラクター造形としても納得行かないのが、若き頃の露伴が実家の絵画を一瞥もせず売買に応じるところだ。彼ほどの好奇心、特に美術品への深い造詣を鑑みれば、海外から買い付けに来るほどの絵画を見てみたいと思わないはずがないと思うのだ。

現在の技術では光の反射を99.98%抑える物質が実際に作られているわけだし、漆黒の絵画を正面から描く映画を見てみたかった。

残念だ。非常に残念だ。