Smoky

ザ・キラーのSmokyのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
4.3
信頼のPLAN Bと鬼才デヴィッド・フィンチャーとの組み合わせ。往年の名作犯罪映画のような雰囲気を漂わせながら始まり(WeWorkの空き部屋w)、無駄を削ぎ落としつつも緩急をつけたプロット、パリ→ドミニカ→パリ→ニューオリンズ→フロリダ→ニューヨーク→シカゴという007並みに豪華な舞台変化、モノローグ中心の台詞(本作でちゃんとした会話と言えるのは「綿棒」ことティルダ・スウィントンとのシーンくらい)、流れまくるザ・スミスの楽曲、全てが見事に組み合わされてラストまでグイグイと引き込まれる。
 
殺し屋として、溶け込むこと、常に冷静であること、確実に仕事をすることなど、冒頭で確固たる仕事哲学を自ら語っているにもかかわらず、仕事でやらかして動揺しまくり、その代償とも言える仕打ちに逆ギレし、元凶に辿り着くために関係者を片っ端から殺していく様が、哲学とは真逆である滑稽さ。目立つし、全然冷静じゃない(笑)
 
元凶に辿り着く頃には冷静さを取り戻し「今日はこれくらいにしといたるわ」となる結末は、この映画のテーマが「復讐劇」ではなく(そもそも自分がミスをするのが悪いw)失敗のショックを自らを癒す「自分探しの旅」であることを示唆している。被害者の数を考えると、ずいぶん迷惑な殺し屋である。
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