RYUYA

ザ・キラーのRYUYAのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
4.5
暗色。油彩。バケハにコートで、銃を向ける無表情の男。『サムライ(僕大好き!!)』のアラン・ドロンを彷彿とさせるノワりっぷりだが、肌着のアロハはなんだか滑稽に...という、シンプルに全てを表現したこのポスター。他のver.も見たけど、たまらん。俺の好きにぶっ刺さる。

「仕事をトチッた殺し屋が、自分が仕事をトチッたくせに、同業、上司、クライアントらを“黙らせ”に各国を渡り歩くというストーリー」というテイの、完全なるデヴィッド・フィンチャー投影作品でしたね。これまで完璧に仕事をこなしてきた男の冷静な憂さ晴らしとでも言おうか、まぁ溜飲が下がりました。普通は作家とか、まんま映画監督とかを登場人物に置いて自己投影して愚痴だったり批判だったりを陳情みたいに作品に忍ばせるんだけど、フィンチャー、その辺の折り合いと抑え方がうますぎて...やっぱ違うっすね。完全に同意です。そういうのって暑苦しくてダサいし、なにより観客に関係ないもん…。今作では、実世界で無口な主人公が独白では濱田マリさんくらい喋りっぱなしなんですが、それらが直情的でも説明的でもないのがまた面白くって。あの独白こそがこの映画の個性でした。

殺し屋の待機時間のルーティンワークから見せる冒頭がもう面白いし、アングル、特に編集が最後まで完璧でした。激ヤバな暗闇大格闘シーンもあるし、フィンチャーが撮る夜と影って、なぜにあんなにエロいのか。移動・準備の工程を淡々と、やたらに見せるとことか、メルヴィルの犯罪映画もそうだけどああいうのむっちゃ好きなんだよなぁ。聴いてるのがスミスだけってのも最高…。

「別にこいつは殺さなくていいだろ」ってやつまで容赦なく断捨離。これぞ殺し屋映画ですよ。そして、ゴミ箱がやけにカッコよく見える映画。ファスベンダーにボンドやってほしかったけど、こっちだったわ。地味にシリーズ化希望です。
RYUYA

RYUYA