ドント

三茶のポルターガイストのドントのレビュー・感想・評価

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 2022年。東京・三軒茶屋 ポルターガイスト現象が乱発する 雑居ビルの一室の恐怖!!(デギョーン!)(木曜スペシャルのフォントで) 手や下半身が映る、鏡から水が出る、女に怒鳴られるなどするハイパー心霊現象稽古場にカメラが密着した!
 実在する心霊スポット(?)に、オカルトメディアTOCANA出身・角さんと監督の後藤さんが泊まったり、怪談を朗読したり、サイリウムを振ったりする。あと再現ドラマとか、若手女優2人(『真事故物件2』『オカムロさん』の人)とこっくりさんをしたり、マジシャンや内装工に「どうです?」と尋ねたり、いしだ壱成とやくみつるが出てきて稽古場とは無関係の怖い話をしたりする75分。
 なんというかね、懐かしいと思いました。80年代90年代の心霊番組みたいで。あるいは00年代のゆるい心霊DVD的で。しかしまぁこれ劇場公開された代物なわけでね。僕はどうかと思いますよ、このくらいのモノを映画館でかけるというのは。しかも75分ある。マジモンでもヤラセでもいいんすけど、もうちょい旨味がね? 美味しさが欲しいの。心霊番組や心霊DVDくらいで終わってほしくない。たくさんやりすぎて味がボヤボヤなのですよ。
 いや、大変だと思いますよ実際。三茶の稽古場の怪異と現場検証だけで長編の尺をやるのは難しいですよ。そこでね、再現ドラマやこっくりさんはまだいいけど、いしだ壱成、やくみつるによる関連性ゼロの怖い話で水増しするのはどうかと思うんです。こっくりさんのコイン(十円玉じゃないのは何故だろう)が明らかに物理力でズルズル動くとか、「手」とかもさ、稽古場の怪異に失礼じゃないかと思うの。あと三茶のポルターガイスト現象に期待してる俺らに。主に俺らに。
 やっぱりこういうのは検証だけで渋く硬くまとめてもらわないとグッと来ない。各界のプロを呼んだなら不動産屋に見取り図を見せたり、マジシャンに仕掛けて動かしてもらって「先日の動きとは違うな……」と確かめたりね。怪奇を頭から信じているのでそういった検証がおざなりになったのかもしれんけど、そういう地味な積み重ねが、斜に観ていた奴らにも「うわマジやん」と思わせるわけですよ。
 そういう意味では、内装工の人による点検シーンがいちばんよかった。「黒い壁の裏側に本当の壁がある」とか「細いクダがあって水漏れはここからかもしれない。しかしクダが通っている理由がわからない」とか相当にワクワクしたもの。そこからのクライマックスは色々起きすぎて「色々起きすぎじゃね?」と冷めちゃったけど。何故か角さんをアゲる霊とか。あと編集が心霊ドキュメンタリーとして無自覚すぎる。
 やべぇスポットに出向いたけど撮れ高がイマイチだったのでカサ増しした、そんな印象の残る一本でありました。心霊アンチを改宗させるくらいの作品を期待したのだが。オカルト探検家・角さんがガンガンやっていくので、そこは痛快ではあった。もうちょっとがんばってください。
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