ルイまる子

アンダーカレントのルイまる子のレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
4.6
あ〜良かった〜真理だ。これが真理だ。人間とは殆どの時間を誤魔化して生きてるのだ。しかしその心の闇を探ってごらんよ〜(人によっては)とんでもなく深いから触れたくない、真っ暗な真の姿を隠し、作り笑いでいい人のフリをする。周りの人が望む言葉を言えればその人はあなたをよく解ってはいないけど、いい人だね、と好感を持ってくれる。周りがそう思ってくれればその町やコミュニティで気楽に生きて行ける。

今泉力哉監督、今までの青春群像劇とは違い、何段階も大人の作品ですね!いつものユーモアも今作では封印し、見応えあるミステリーとなっている。

アンダーカレントとは底流の水のことで、上流の水とは全く違う流れ方をする。また人間の深層心理という意味もあるようだ。映画の始まりにアンダーカレントの意味を文字で説明しこういう深層心理を追求する映画ですよ、と宣言してくれたのは効果的だった。
真木よう子、あ〜なんという深い表現力だろう。そして井浦新も全部身体から表現する。瑛太も流石だ。リリー・フランキーと江口のりこは視聴者に息をさせてくれるパートを引き受け、作品を一層深く彩っている。



【ネタバレ】暗い底なし沼みたいな闇を抱えた人ほど、敢えて人の底は見ようとしない、又は無神経で気付かない人と結婚する。バレたくないから。この夫婦もそういう理由から一緒になったんだろう。しかし別れも必然だ。

最後の瑛太のセリフが良い。
妻 どうして私のもとから去ったの?
夫「君が好き過ぎたから」とでも言っとけばいい?
このセリフすごいね。答なんてどうとでもなるんだよ。相手が求める言葉を素早く察し捏造して言えば相手は納得するのだ。だって誰も洞察しない、他人を深く観察し、本当に心底から出た言葉かどうかなんて考えたりしない。現代人は忙しく孤独だ。あんなに人情溢れるお風呂屋さんが舞台だったけどね(あ、近所の温かい住人達との適切な距離感とを比較して描いてたのか!)リリーフフランキーの言葉が残る。「じゃ、ちょっとお聞きしますが、人をわかるってどういう事ですか?」
ルイまる子

ルイまる子