『愛がなんだ』『窓辺にて』などの今泉力哉監督最新作。
銭湯を営むかなえの夫が突然失踪し、一時的に休業していたが再開する際に堀と名乗る謎の男がやってきて住み込みで働くことになる。一方で、友人から紹介された探偵に夫の行方を捜してもらう中で、知られざる事実とかなえ自身に奥底に眠る部分まで浮き彫りになるというお話。
原作未見なので、どこまでが原作通りなのか分かりませんが、初見で観た感じとしては、台詞の依存度が強く、特に後半の個々の独白(自分語り)が真相に強く起因している部分が大半になっている展開は、ドラマとしての都合の良さを感じるところであり、映画の長さほどの期待に対する返りの強さでもないところに、消化不良感は否めない感じでした。
おそらく、映画全体の個々のエピソードや登場人物たちの人間模様はあまり意味はなく、主人公のかなえ自身の心底の部分だけが本当に必要な要素だとすると、そこに対するアプローチや匂わせのような要素は、もう少し各所にちりばめておくと、終盤やラストシーンの意味もより強く印象づけられたように思えました。
監督の前作「ちひろさん」でも感じたことですが、自分に向き合うために使う時間とエピソードのバランス感の難しさを今作でも感じ、原作の味なのか脚本や演出面の問題なのかわかりませんが、割り切れないものを感じました。
一方で、細野晴臣さんの劇伴は控えめでしたがかなり良かったです。