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終わらない週末のfujisanのレビュー・感想・評価

終わらない週末(2023年製作の映画)
3.5
『考察好きなら最高の映画』

12/8配信開始のNETFLIXオリジナル映画で、作家ルマーン・アラムの小説原作のディザスター系サスペンス・ホラー。

・エグゼクティブ プロデューサー:バラク・オバマ夫妻
・ジュリア・ロバーツ
・イーサン・ホーク
・マハーシャラ・アリ(グリーンブック)
・ケヴィン・ベーコン
っていう、すさまじいパワーワードが並ぶ作品でもあります。

物語は五章立てで進行。
パート1:家
パート2:曲線
パート3:騒音
パート4:洪水
パート5:グランドフィナーレ

ニューヨークで重役として働くアマンダ(ジュリア・ロバーツ)とクレイ(イーサン・ホーク)夫妻が子供2人を連れてロングアイランドの貸別荘で休暇を過ごしていると、別荘の持ち主であるGH(マハーシャラ・アリ)が娘を連れて避難してくる。

どうやら、外の世界では何かが起きているようだ・・・

海水浴票の砂浜にはGPSの不通により巨大なオイルタンカーが座礁し、インターネットや電話も不通に。途切れ途切れのテレビでは、大規模サイバーテロが報じられているが、そのテレビもいつしか映らなくなる。

別荘地で完全に情報から遮断された二組の家族は何とか情報を得ようと奔走するが、何かを感じているかのように、付近の森から鹿たちは庭に集まり、プールにはフラミンゴたちが集まってくる。

車で周辺を捜索していると、上空には突然UFOのような巨大ドローンが現れ、何かが書かれた赤い紙を霧のように撒き散らす・・・

劇中では終始不穏な音楽が流れ、情報から遮断された主人公たちは
外で何が起きているかわからないままに、徐々に”何者か”に追い詰められていく・・というストーリー。



これはなんて言うか、説明も評価も難しい映画でした。

雰囲気的には、ジョーダン・ピールの「アス」や「NOPE」の『よく分かんないんだけど、確実に何かが居るよね』っていう不穏さ。他にも「ミスト」とか、「10 クローバーフィールド・レーン」とか、そういう雰囲気に近い映画だと思います。

違うのは、この”何か”が、地球外生命体的なものなのか、TVで一瞬流れていたような他国によるサイバーテロという人為的なものなのか、これが、最後の最後まで、なんのヒントも与えてもらえないこと。

別荘地には他の家もあるのですが、得体のしれない何かに襲われている恐怖と不安から、それぞれの家は鍵をかけて閉じこもり、相互不信に陥ります。

『誰もいなくなり、静寂に包まれた町』
これはまるで、コロナ禍で訪れた不穏な静寂のようであり、家に立てこもる行動もまた、トイレットペーパーやマスクを買い求め、家に備蓄していたコロナ禍を想起させるものでした。

スマホが与えてくれる情報やSNSでの社会とのつながり、GPSがもたらしてくれる地図や行き先案内など、今、人間が得ている便利さは脆弱なものであり、これらを失った恐怖のなか、本当に怖いのは人間同士である、という恐怖を描いている映画だと思いました。



主要なサイトを見ても本作の評価は真っ二つに割れているようで、その理由はおそらく、多くの謎が説明されないままに終わるところが原因かと思います。

これはある意味、『考察のしがいがある映画』とも言えるわけですが、同時に、見ている方に解釈を投げっぱなしで終わる映画であるともいえ、好き嫌いがはっきり分かれるのも理解できます。

個人的には、あまりの乱暴さに考察する気は起きませんでしたが、この映画は、個人が、またアメリカ自身が抱えている、”周りは敵だらけ、という疑心暗鬼を寓話的に表現し、相互理解の大切さを訴えるもの。

それを今、世界の超大国アメリカの元大統領が伝えたかったとすれば、重い映画なのかもしれません。


情報が与えられないままに進む映画としては少々長いですが、ジュリア・ロバーツはじめ名優たちの共演は見ごたえがあり、色んな方の考察が読みたくなる作品としては、オススメできる作品です。

なお、旅客機が墜落して砂浜に人体のパーツが転がってるR指定作品でもあるので、ご注意を。


「終わらない週末」

これで終わりなのか、ここから始まりなのか。それすら考えさせる秀逸なタイトルだと思います。


(週末は終わっちゃうけどね😓)



2023年 Mark!した映画:346本
うち、4以上を付けたのは39本 → プロフィールに書きました
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