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ナイアド ~その決意は海を越える~のmaroのレビュー・感想・評価

4.0
2023年日本公開映画で面白かった順位:29/173
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:-(配信で鑑賞)

これはとてつもなく面白い映画だった!!
64歳にしてフロリダ海峡を泳いで横断するとか正気の沙汰じゃねぇ!!
一部の劇場では上映されていたのだけど、期間限定だった上にタイミングが合わなくて観れず、、、それが今年最大の後悔。
いや、これはもうシネコンで上映してもいいぐらい!!

この映画、簡単に言ってしまえば「還暦を過ぎた人が偉業を成し遂げる」という話で、年齢をものともせずに挑戦していく姿に感動を覚える内容だ。
その設定だけでも面白いとは思うのだけど、個人的に並々ならぬ思い入れがあるのは、僕自身がもう40年近く水泳を続けていることに他ならない。
だからこそ、このナイアド(アネット・ベニング)の挑戦がいかに大変かが身を以てわかる。

この映画を観るまでダイアナ・ナイアドという人物は存じ上げなかったのだけど、もともとは長距離の水泳選手。
28歳のときに一度キューバ・フロリダ間を泳いで横断することに挑戦したのだけど、強風や波にあおられ違う方向へと流されてしまい、余計に体力を消耗したことで途中で断念。
それから30年。
かつて失敗したことを心残りに想いながら、メアリー・オリバーの詩に心動かされる。
「あなたは何をする気?一度きりの貴重な人生で」
一念発起した彼女は30年ぶりに挑戦することに決め、協力者を募り、再びキューバへと向かった。

経験したことがある人ならわかるだろうけど、海で泳ぐのはプールで泳ぐのとはまったく別物だ。
潮の流れがあるため、一定のスピードを保たなければ違う方向へ流されてしまう。
特に、このフロリダ海峡は潮の流れが速いらしく、おまけにサメや毒クラゲもいる。
水温は低く、天候の問題まで。
嵐が来たら風と波で泳ぐどころではないし、晴れたら晴れたで日焼けに悩まされる。
そんな状況で60時間も塩水に浸かりながら泳ぎ続けなくてはならない。
いくらずっと水泳をやっていたとしても、相当なフィジカルとメンタルを持ち合わせていなければ、絶対にクリアなんてできない。

それはナイアドも同じで、実際に体力的な問題や悪天候、毒クラゲに刺されるなどして、28歳のときの挑戦も含めて4回も途中でリタイアしているのだ。
でも、彼女はあきらめなかった。
4回失敗して、まわりの協力者たちも「これ以上は付き合いきれない」と言う中でも、「絶対にやり切る」という彼女の熱意にほだされ、再び集い、ラストチャンスの5回目でようやくゴールできた。
泣いたよね。
自分がずっとやっているスポーツってこともあって、この熱意と努力とそれによってもたらされる成功に涙出た。
最後の彼女のセリフ、どんな物語にも必ず出てくるポピュラーなセリフだけど、この偉業を実際に成し遂げた彼女だからこそ、最大級の説得力があった。

・絶対にあきらめないこと
・夢を追うのに年齢なんて関係ない
・個人競技だと思ってたけど、チーム・スポーツよ

そんなわけで、年齢を気にせず、前人未到の領域にチャレンジするというとても勇気をもらえる映画だった。
水泳をやっている(やっていた)人はもちろんのこと、そうじゃなくてもナイアドのあの熱意には感動する。
これまで観た「偉業を成し遂げる系」の映画で一番面白かった。
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