見終わった時に、「いいタイトルだなあ」と思った。
愛を与え合い、心を通わせる。
相手を労り、思いやる。
別れの寂しさや、生の対となる死、痛みを知る。
そうした人生の苦味と甘みを知るひと夏を「はじまり」と表すのはまさにその通りだなあ。
ここからコットの道がはじまっていくといいなあと思った。
もちろんあのひと夏でコットの生い立ちの負の部分がすべて消えたわけではないし、
今すぐにでもコットの白い脚に絡みついてきそうな不穏は拭えない。
人生は自分ではどうにもできない出来事がある、という摂理を知ることになるのは歯がゆいのだけど、
ふとしたきっかけで粉々になってしまいそうなコットの脆い心を包んで、暖かくして、たくましくしてくれたのは、あの夫婦との出会いがあったから。
まっすぐにでも、不器用にでも、「君は大切なんだよ」と伝えることは、小さな子どもにとって大切だということを改めて知った。
テーブルの上にそっと置かれたビスケット。
あれは愛と優しさのかたまりだったなあ。