岩嵜修平

アダマン号に乗っての岩嵜修平のレビュー・感想・評価

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)
3.6
何も知らず金熊目的で観た人は序盤、困惑したのでは…と思うくらいに自然に理想的なコミュニティが成り立っている凄さ。最後まで観ても、登場人物たちが精神疾患を抱えた人々だとは思わなかった人も居るかもしれない。コミュニティに迷う僕にとっては"ユートピア"にすら思える。

正直、ドキュメンタリーとしては何の工夫も無いというか、ニコラ・フィリベール監督の狙いを感じさせないところが凄い作品だと思うが、映画としての質を問うべきベルリン映画祭が本作に最高賞を贈ったのは画期的。他のどの作品よりも、今の時代に必要な映画という評価なのだろう。それほど輝いていた。

それこそ、日本でも精神科医療や介護の現場において、同様の創造的な活動を通じたコミュニティ型での支援は数多く行われており、様々なドキュメンタリー番組でも取り上げられていると思うが、今の時代には、本作くらいポジティブに描くことが必要なのかもしれない。苦しい現実には、夢や理想が必要。
岩嵜修平

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