Sasada

パスト ライブス/再会のSasadaのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.7
あーもうすごく好きでした。恋愛映画としては今年どころか生涯ベスト級に好き。

人生を彩る一部として恋愛を(かけがえのない誰かを)位置付けているのがまず心地よいなと。ノラにもヘソンにも恋愛以外に目標がある中で、大切だけど全てではなくて、全てじゃないけどお互いに忘れることなんかできるわけがない。多くの人にとっての恋愛のリアリティってこういうことだと思うし「あ、この感情知ってる」って腑に落ちる人多いと思う。

割と長回しの多い静かなトーンながらスクリーンから目が離せないのは、そこに気恥ずかしさや喜び、寂しさと愛情が映り続けているからで、そこに「あの時ああしていれば」は入り込む余地はない。彼も彼女も夢があって生活があるわけで、あれ以外の決断などありえない。同じ場所を回り続けるメリーゴーランドのように何度繰り返したって彼と彼女は結ばれないのが今世での“イニョン(縁)”だと認め“さよなら”を交わす美しさたるや。共に生きることはなくとも、彼も彼女も今が紛れもなく最高だ。

あと移民の映画としてのあれこれも面白くて、「野心溢るる」「アジア系移民の女性」が自身から「韓国人らしさ」がなくなっていることに悩んだり、疎外感を感じるのが「ユダヤ系アメリカ人の恋人」だったり、“コミュニティに馴染めない移民の話”の典型は超えるフェーズに入ったのだなと。
そういう意味で多少揺らぐアーサーとノラの関係性だけれど、アーサーの振る舞いが最高だった。ノラを思い、何ならヘソンをも愛する。他者への敬意を表現し続けるこの映画の何よりの良心。

あと言うまでもなく画が最高に決まってる。ラストの一連とか凄すぎ。
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