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パスト ライブス/再会のJPのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.6
▼実はめちゃくちゃテンポが良い!

20年以上にわたる、彼らの人生の重みを感じさせる人間ドラマだが、今作の尺、わずか106分!この尺にパッケージした手腕に脱帽。
眠くなった人もいるかもしれないが、非常にテンポは良いと思う。


▼印象的な沈黙が、二度訪れる

長く印象的な沈黙の場面が主に2回あるが、非常に見応えがあり、ドキドキしながら見守った。
1回目の沈黙は、12歳パートの最後の下校。ヘソンがバスケットボールを自分の想いのように持て余しながら、ふたり黙ってあの坂を登っていく。景色がめちゃくちゃ美しい。分かれ道、ナヨンが階段を登り、ヘソンは緩やかな坂へと分かれていく。文学賞という高みを目指すナヨンを表しているようで示唆的。


▼よくある三角関係ドラマ…ではない!

今作はそんなドロドロしたものには決してならない。二人の男性が一人の女性を奪い合う、みたいな短絡的な物語にはなっていないのが◎

アーサーがいわゆる嫌な感じの「当て馬」になるのは簡単だが、今作そうはなっていない。


▼不可逆でもあり、循環もするメリーゴーランド

今作、絵葉書のように美しい街の景色が多くて凄い。印象的なカットはたくさんあるが、ポスタービジュアルにもなっているメリーゴーランドの場面は、やっぱりめっちゃ良い。

この場面で二人は24年前について語り、あの泣き虫だったナヨンはもうここにいないことを二人とも悟る。能天気な音楽をかけながら回るメリーゴーランドは「子供時代」の表象でもあり、同じ方向に回り続けていて「決して戻らない子供時代」を表しているようにも見える。

しかし、周期をもって同じところを循環しているメリーゴーランドは、「12歳/24歳/36歳」という「十二進数」で進むこの映画自体をも表している。過去には戻れないし、ナヨンは泣き虫な自分を過去のヘソンのもとに置いてきた、と言っていたが、二人は「イニョン=運命」によって十二進数で周期的に巡り合う。「輪廻転生」についても言及されるとおり、この映画は不可逆で直線的な「過去から未来」への物語にとどまらず、それを超越した「循環の物語」になっている。

2回目の長い沈黙は、36歳の二人の別れの場面だが、そこでヘソンは24年前に言えなかった「来世で会おう」を言うことができた。たとえ今世でもう会えなくても、絶望的な人生でも、イニョンを信じることで人生が豊かになり、人との縁を慈しむことができる。美しい映画だ。
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